常々感想記

本 映画 音楽 その他諸々の雑感を書き連ねるブログ

感想

グレン・グールドは語る、が何を言っているかぼくにはさっぱり

1974年8月15日発行のものと、次の8月29日、二号に渡ってローリング・ストーン誌に掲載されたグレン・グールドへのロングインタビュー記事に、補填や資料を加えた本。 グレン・グールドが自らの音楽、思想や理念をつまびらかに語るのですが……。 グレン・グー…

ワルシャワ・ゲットー

第二次世界大戦時、最大の受難者はユダヤ人だった。 彼らは排斥され、隔離され、処理された。ユダヤ人は人ではなく、羽虫のようにあっけなく命を散らしていった。奴隷以下の扱いを受け、そこを歩いていたから、という理由で殺されることはおかしくもなんとも…

深夜の人 結婚者の手記

日記や手紙、詩歌、随筆など集めて編纂した本。 素直で実直、だというのがぼくの室生犀星への印象。 彼の作品にでてくる人たちは、生きているというか鮮度が高いというか。自らの感情にいちいち理屈をつけたりしないところが好きだ。それにこの作品集は随筆…

正義と法の狭間で

浜尾四郎という推理小説家がいる。 推理小説家であると同時に犯罪小説家でもある。この二つは重なりやすいし、現に大抵の推理小説家は犯罪小説家である。この二つの違いは何か。推理と犯罪。推理小説は”謎”を解明する小説で、犯罪小説は”犯罪”を解剖する小説…

白痴という差別用語?

イディオッツ。酷評される一方絶賛されもする”映画”。 監督はラース・フォン・トリアー。 この作品はきりきりと胸が痛くなる。 あらすじ 本作は、すべてロケのみで行われ、カメラは手持ち、人工的な照明は禁止条件で撮影する“ドグマ95”という映画監督集団に…

ゴースト◯◯◯◯◯

ニューヨークの幻でもなく、バスターズでもない。 ”ハンターズ”だ。ゴーストバスターズのぱちもんかと思いきや全く違う。 むしろぼくはこのハンターズの方が数段面白く観れた。 監督はジョン・カーペンター。主演カート・ラッセルのアホ映画。 このゴースト…

ベン・ハー

見たいな、と思いながら中々踏み切れなかったのはその上映時間の長さの為。 何と222分というほぼ四時間という長さ。こんなの映画の長さじゃない。2時間を超える映画ですら最近は見る気がなくなってしまう僕にとってこの映画を見ることは磔刑を受けているみた…

マイ・ファニー・レディ

”007スペクター”か”フランス組曲”を見に行こうと思っていたが、そういえばボグダノビッチの最新作やってるじゃんと思い出し、ラブコメの気分に。とにかくバカみたいな映画をみたいという欲求がメラメラと湧いて出る。 かつてコールガールをしていたハリウッ…

バレエ・メカニック

あらすじ 造形家である木根原の娘・理沙は、九年前に海辺で溺れてから深昏睡状態にある。「五番めは?」―彼を追いかけてくる幻聴と、モーツァルトの楽曲。高速道路ではありえない津波に遭遇し、各所で七本肢の巨大蜘蛛が目撃されているとも知る。担当医師の龍…

また会う日まで

「トランクスとブラには、見覚えはあるけど」 「こいつも悲しいんでしょう」 「辞めて惜しい仕事じゃない」 「おれには息子がいる!」 一年が終わる。 今年読んだ本の中で、心を打った本は数多くあるが、その中でもとびきりなもの、ほのかに発光する、本の感…

りら荘事件

推理小説を最近読んでいないことに気がついた。じゃあ久しぶりに何か読んでみようと思って手に取ったのは鮎川哲也の”りら荘事件”。一気呵成に読みきりたかったから、時間が空くのを待っていたら読み始めるのに買ってから少し時間が空いてしまった。読み始め…

流せよその涙、とデジモンは言った

観てきましたよ、デジモン。 面白かったです、がこの面白さが曲者で素直に受け入れていいものかどうか。 デジモン放映当時、ぼくは小学校低学年、そうまさに世代ぴったしなのです。”デジモンアドベンチャー”が放映したのが1999‐2000年だということで、そこか…

わたしの名前は……

ハイウェイを走る大きなトラックは橙色。ハイウェイの地平線の向こうは、空は蒼。 道路の脇には木々が疎らに居座っていて、その根元には肌に触れるとちくちくしそうな雑草が生えている。 鮮やかでありながらありふれた光景。 Agnes`bというファッションブラ…

聖なる怠け者の映画祭

大仰な名前を付けているが要するに見たい映画がいっぱいあるのでここしばらく映画館通いをしようということ。そう一人映画祭(えいがさい、でなくえいがまつり)である。ここにぼくの名を以て開会を、宣言する!どんどんぱふぱふー。 ラインナップは わたし…

ハーモニー(映画)

………………?????? どうしてこうなった? これは、恋愛映画になっている。 色々戸惑って正直わけわからないと思ったこの映画。 わからないのは改変した理由ではなく、動機です。何故そうしたかの根っこの部分がさっぱりわからんのです。 あらすじ 大災禍と…

ハーモニー

ユートピアであり、ディストピア 個を差し出して、得られた代替物は平穏と健康 「自分のカラダが、奴らの言葉に置き換えられていくなんて、そんなことに我慢できる……」 「わたしは、まっぴらよ」*1 ぼくにSFとは、を教えてくれた本。といってもSFにも多種多…

ルバイヤート

九重の空の広がりは虚無だ! 地の上の形もすべて虚無だ! たのしもうよ、生滅の宿にいる身だ、 ああ、一瞬のこの命とて虚無だ!*1 十一世紀ペルシアの詩人、オマル・ハイヤームは短い四行詩(ルバーイイ)で人生を歌い上げた。抒情的に簡潔に。難しいことは…

零式戦闘機

零式戦闘機、通称ゼロ戦。 その機体は日本の誇りと意地の結晶だった。 優れた性能を持ち第二次世界大戦で活躍した機体。 しかし次第に大国が迫ってくる。追い詰められる日本。 そして… ぼくにこの本を勧めてくれた人はこの本を絶賛していた。同時に”風立ちぬ…

カランダールの雪(東京国際映画祭にて)

六本木で行われている東京国際映画祭に行った。 東京国際映画祭といえば六本木ヒルズの印象が強いが、実は新宿でもやっている。 今回は新宿でやっていた「カランダールの雪」を見てきた。 トルコ=ハンガリー映画。客も国際色豊かだった。 あらすじ 険しい山…

もしもし

この本を読むときに気をつけること 1つ 他人の目が届かないところ、なるべく自室で読むこと 1つ 近くにティシュもしくはタオルと用意しておくこと 1つ バカになること、見栄や体裁は捨てること、思いきり笑うこと。(このためにも1人でいる時に読むがよ…

ガタカ

セピア色の未来。 懐かしさを感じる、けれどここではない世界。 そこはぼくたちがまだたどり着いていない未来。 でも、ぼくたちのなかにある世界。 静かなSF映画。ジャンルで区分すればSFだけど分ける必要ない。 そんなSF的な要素はガジェットとして組み込ま…

スミス都へ行く

相も変わらずのフランク・キャプラ映画。喧々諤々の議会での演説や討論が見どころ。英語での怒声や哄笑、迫力あります。大の大人が唾散らして必死に論を振う姿はどこか滑稽ですが、魅力あり。そしてなにより脇を固める役者がいい味出してます。主役のスミス…

METAL GEAR

メタルギアソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット ゲームのノベライズは読んだ経験もないし、興味もない。ゲームそのものをやればいいと思うし、ゲームでしかわからないことが山ほどある。わざわざ小説にしたものを読む必要はない、ゲームをやれば済む話、と…

戦争と平和 

名前は誰もが知っている。 しかしその中身、その極厚の本の内容となると、皆ぼんやりとしか把握していないのではないだろうか。だってめちゃめちゃ長いし、めちゃめちゃ疲れるし、これを最後まで読み通す気力を持ち続けるのは困難ではないか。 題名は強烈、…

「屍者の帝国」映画感想

公開初日朝一番で観に行っといてなんですがつまらなかったです。つまらないというより退屈でした。退屈ですけど楽しめました。 この映画は娯楽映画です。それ以外ではないです。ただの娯楽映画です。何かのメッセージ性だと訴えかけるものだとかは一見ありま…

いざ、「屍者の帝国」へゆかんとす

我々が死者に安らかであれ、と願うのは何故だろか。 それは死者が往々にして安らかではないからだ。 と著者のひとり伊藤計劃は色々なところで言っている。伊藤さんの最後の作品となってしまったこの作品。 プロローグは死者が、この話では屍者と呼称される、…

心が叫びたがってるんだ。の感想

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない、の監督の最新作 "心が叫びたがってるんだ。”を見てきた。 軽くバレンティンしてます。 あの花と言えば月9かなんかで今ドラマ化されているらしいし、アニメが門外漢な方でもその名前ぐらいは耳にしたことがあるので…

Mって何さ

下手な官能小説よりエロティックじゃないんですかコレ(官能小説読んだことありませんが)と毛皮を着たヴィーナスを読んで思います。 何でもマゾヒズムの語源はこの著者のレーオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホから性科学者、初めて聞いたぜこんな科学分…

女たちよ!

言っておくけれどぼくが女性に対して含むところは、今のところない。「女たちよ!」というのはそういう題名の本です。とても面白いです。 映画俳優であり、デザイナーであり、エッセイストであり、映画監督でもあり、翻訳もし料理も上手。そんな伊丹十三が著…

ヴィンセントが教えてくれたこと 

ブログで色々感想書いていきますが基本ネタバレあります。 ナオミ・ワッツでべそだなぁ!最初、色気も何もないベッドシーンから始まる。 歳の離れた友情物語、は互いが互い(老人と子供)に与えるものがあって、自分を振り返り、見つめ直すところが見どころ…