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DOKIDOKI Literature club!=ドキドキ文芸部!

 

「Doki Doki Literature Club!」という海外の同人ゲーム作品の噂を聞き、興味を覚えsteamで無料だというのでプレイしてみた。日本語版があるわけではないけれど、どこかの誰かが作成してくれた日本語に翻訳するパッチもあるので遊ぶのに支障はない。ありがとうございます。

 

僕が聞いた噂というのが

「このゲームをプレイして自殺した人がいる」というものだった。

Doki Doki Literature Club!=ドキドキ文芸部!のことも以前僕にマブラヴを勧めた同僚から話を聞いたのだが、この同僚はダメな奴でクリアする前にネタバレを見てしまったそう。それじゃあ、実際にプレイしたときの衝撃を味わえないじゃん、とややバカにしていた。けれどプレイし終わった今なら言える、コレはまともな人がやるもんじゃない。

心臓に良くない。 ネタバレ見た方が健やかに過ごせる。

本当に自殺した人がいるなんて眉唾ものだろうが、その噂が流れるほどの鬱ゲーなんだろうと、多少心構えをしてプレイ開始したのだけれどもそんなちんけな防波堤はすぐ壊された。いやー精神的に良くない。

 

とんでもないゲームです。戦慄が間断なく、体を襲う。

自分の居場所が壊されて、途方に暮れる。


この噂が流れるのも納得してしまう。
制作者の頭疑う…よくこんなもの作ろうと思ったな。

 

ここまで読んで興味をもった人はこの先を読まずに、プレイしてください。できるだけネタバレ抑えるけども、読んでからプレイしたら、面白さは損なわれます。

 

あらすじ

主人公の「ぼく」は高校2年生。
ある日、隣に住んでいる幼馴染サヨリから文芸部の見学に誘われた。
帰宅部なのを見かねて、と言っていたがどうやら人数が少ないので、穴埋め要員としての勧誘のようだ。入部するつもりはないが一度付き合えば、角も立たないだろうと放課後文芸部の活動をしている教室に向かう。

ぼくは驚いた。文芸部の面々はきれいな女子生徒ばかり。

ちょっと幼いが愛らしいナツキ

ザ、黒髪美人でおしとやか、内向的なユリ

才色兼備という言葉がぴったりの部長のモニカ

そして副部長で主人公の幼馴染のサヨリ(サヨリも可愛いぞ)

 

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左からモニカ、ナツキ、ユリ

うん、帰宅部で別にやることもないし、サヨリにも懇願されるし、
文芸部に入ってもいいかな!

しかし、女子の花園に主人公が加わることで、思わぬ事態を招くことになる…

 

 

この文芸部、主人公が入部してから自作の詩の見せあいっこを行うことになる。

そこで主人公がどんな言葉を選ぶかによって、出来上がる詩が変わり、女子の好感度にも影響が出る、というゲームシステム。ヒロインたちが好きそうな言葉を選べばOKなのだけれど、しかしヒロインたちが見せてくる詩が不穏なことこの上なく、なんかもう進めるのもやだ…

 

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女子高生がこんな詩を見せてきた日には泣く

どう考えても不幸な未来しか見えず、凶行が繰り広げられる前に一度やめようか迷っていたのだけど、そんなプレイヤーの甘ったれた逡巡を許さないかの如くサヨリが自殺をする。何を言っているかわからないと思うが本当に彼女は自殺する。そこからは急転直下で、ゲームが進められてしまう。やめることを許してくれない。


この言葉自体、ややネタバレになることは承知なのですが、目がひん剥かれる瞬間が訪れる。記号としてしか彼女たちを見ず、消費していることに無自覚な人への警告です。次から次へと「ギャルゲー」を商品として消費し、物語の登場人物であるヒロインたちを使い捨てている人への怒りでもあり、その果てに行きついた絶望の話です。とにかく怖い。おぞましい。心臓をつかまれたような息苦しさを味わいます。誇張ではなく、目をそらしたり、肌をガリガリ掻いてしまったりと、落ち着かない気持ちになります。なぜなら画面の前にいる自分自身が今まさにその行為に加担しているから。

 

画面のクオリティは商業作品に比べたらチープです。立絵なんかデフォルメしたにしても頭身のアンバランスさが顕著。ストーリーなんてあるようでありません。でも、仕掛けだけでこんなに総毛だつものなのか。

演出方法としてはゲームに詳しくない自分でも、すこしPCに詳しい人ならばできるのだろうと思えるもの。ただ、ギャルゲーのお約束と文法をぶっ壊し異質な物を混ぜ込むことで、えも言われぬ不気味な印象を作り出すことに成功しています。


「恐さ」はそれが何かわからないから抱くものであり、
「不気味さ」は異質なものが紛れ込んでいるからこそ感じ
「ギャルゲー」という世界の枠を一瞬で壊すので、眩んでしまう。
彼女は自らを懸け、自らを贄とし、選択を迫ることでこのゲームを成立させた。
制作者は我々の息の根を止めに来る。
たとえプログラミングされたテキストを述べるだけの2次元的な人物だとしても
自分の行動が人の運命を左右する様を目のあたりにする。キーボードを押し込むだけ。ただそれだけのことなんだけどそのままの状態でしばらく放っておいた。
ゲームが先に進まないので、操作をするしかないんだけどもその手触りがこんなにも重くてざらつき嫌悪感を催し吐き気が沸いてくるものだと知らなかった。

 

steamから無料でインストールできるのでぜひプレイしてほしい。

長く見積もって3時間あれば一通りクリアはできるはず。そして感想を聞かせてほしいです。健康な人、怖いものが見たい人にはおススメです。ただ、心が弱っている人はプレイしないでください。責任は負えませんので。ちなみに今日クリアした以来にちょっとさわったけど、ガクブルでした。

 

ほんとに怖い。