常々感想記

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マブラヴとマブラヴオルタネイティヴ プレイ感想

 

マブラヴをプレイして、

ちょこっと文章書きたい欲が沸いたので久しぶりにブログを更新します。

 やや自己満足のために文章を書いているので読みにくいかも。平にご容赦ください。

 

マブラヴ】とはエロゲです。つまりHなシーンがあるゲームです。

ただ、全年齢版が出ていたりアニメ化されたり(なぜかスピンオフの方が先にアニメ化されたらしい)してもおり、単なるHなゲームの枠を超えたものがあると言っても過言ではないでしょう。いや、過言ですね。

MCU同様漫画だーアニメだー小説だーとスピンオフ作品群が大量にあり、1つのユニバースが形成されています。以降【マブラヴ】といった場合2003年に発売されたゲームのことを指します。

そもそも発売が2000年代初頭のこのゲームをどうしてやろうかと思ったかというと【進撃の巨人】の作者がすごい影響を受けた作品と公言していると聞いたからです。でも進撃の巨人、10巻くらいまでしか読んでないですゴメンナサイ。ちょっと面白いのはマブラヴはエロゲなので作者がタイトルを口にするたびにピー音で伏せられていたということ。このR18禁ゲームを影響受けた作品として公言して憚らない作者もすごいですが、言及されるゲームもすごいのだろうと思いました。

 

ちょっとした興味本位で、プレイ済みらしい同僚にどんなゲームなの?と聞いたら返答が「何も聞かずにやってください。幸せっていいもんです」と。

 

そこまで言うならやるしかないじゃない。えーっと丁度steamでセールしてるわ。うわ絵柄古いなコレ。蘭姉ちゃんがかわいく見える髪形だよ。鉄骨入ってんのかい?で、どんなギャルゲーなの?え、とにかくやれ?うーん、こいつらのこと可愛く思えるか不安だ。なんかいくつかあるけど…【マブラヴ】と【マブラヴオルタネイティブ】を買え?2つで1つなの?そうじゃないとダメってって商品としてどうなの。1本で完結しないゲームってさ。まぁ買ってみるけども。

なお、steamだからR18版かと思いきや全年齢版でした。くそ。

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マブラヴのパッケージ絵 やはり古い 

 

期待せずにやりはじめたのですが、プレイ後の感想はこれを書いていることから察してください。

BETAめ!駆逐してやる!皆殺しだぁぁぁぁぁ!!!

 

はい、改めて【マヴラブ】ってどんなゲームなのか、ざっくり説明します。

公式によるとジャンルは「超王道アドベンチャーゲーム」。

つまり、テキスト読んで、選択肢が出て、その選択如何でシナリオが分岐するゲームです。ギャルゲーといえばわかりやすいでしょう、女の子といい仲になるのが目的のゲームです。

 

ただ、少し先述した通り【マブラヴ】と【マブラヴオルタネイティヴ】という2つのパッケージがあって、これで1つのシナリオになっています。(以下、マブラヴ=ML、マブラヴオルタネイティヴ=MLAと略します

)MLとMLAは毛色がかなり違っており、ギャルゲー要素はMLにしかありません。そしてMLAに言及した瞬間、ネタバレが不可避になってしまうので、とりあえずMLだけについてだけ。

 

■レベル1(ざっくりでいいからMLってどんな内容?)

 

〇あらすじ

俺は白銀武!白陵柊高校の三年生。大学はエスカレーターで白陵大学に進学することが決まっているので、3年生の10月という時期にも関わらず受験勉強なんてどこ吹く風さ!気楽に隣に住んでいる幼馴染の鑑純夏と毎日面白可笑しく過ごしている。
最近は「バルジャーノン」という対戦格闘ロボゲームにはまっている。親友の鎧衣尊人は鎬を削るライバルだ。

で、その日もいつもと同じ日と変わらないと思っていたんだが…
朝目覚めると隣に美女が寝ていた!誰だこの女は!

純夏には一緒にベッドに入っているところを見られ詰問される始末。
これから俺の日々はどうなってしまうのだろう…


というどこにでもあるようなギャルゲーでした。
主人公に際立った特徴がないのも、なぜかモテモテなのも、ゲームの性質上1人を選ばないといけないのですが、にも関わらず他の女子がそれに理解を示すのもTHE男の子の願望といった感じです。

 

攻略可能ヒロインは5人
・鑑 純夏 主人公の幼馴染 隣の家に住んでいる おバカ 赤い髪の子

御剣冥夜 ある朝突然主人公の布団に寝ていた美女 大金もち 青い髪の子

・珠瀬壬姫 クラスのみんなのマスコット。プリチー ピンクの髪の子

・榊 千鶴 クラスの委員長。口うるさくおせっかい ベージュの髪の子

・綾峰 慧 不思議ちゃん。サボり魔。 黒い髪の子

他、担任のまりも先生や破天荒な夕呼先生等々、の女性キャラも出てきます。


ヒロイン事にそれなりに事情があって、手助けしたり喧嘩したりして仲良くなってくっつきます。物語の起伏は薄いです。主人公は毒にも薬にもならない凡骨であるので、どうやったって主人公以外のファクターで物語を動かすしかありません。まあアドベンチャーゲームってそういうもんでもありますが、普段やりなれていない人にはキツイ。

プレイしていると濡れ場一歩手前というか、表現ぼかしているけどやることやってるシーンがあります。元が18禁だからあぁここにもっとキツイ表現でそういうシーンがあったんだろうな、となんだかやるせない気持ちになります。

2000年代初頭のゲームなので、キャラデザが古いのはしょうがないけどさぁ。「何も聞かずにやってください。幸せっていいもんです」っていうほど面白くない。

というかまったく面白くない。親密度の演出なんでしょうが、今の世なら主人公はフェミニストから大バッシング受けそうなくらい幼馴染に頻繁に暴力をふるっているし、時折入るわけわからんメインヒロインの純夏が描いた絵日記パートはうすら寒いし…個人的に1番耐え難いのがセリフとか言葉の選び方がダサい。「ゲームではあるんだけれども受け付けませんでした。普段は口数多くない人が、血迷ったときに口にしてしまうようなこっぱずかしいワードチョイス、時代を感じた。ぶたれた時の叫び声が「カガーリン」って寒いです。

それに主人公が下手にしゃしゃり出てくるから自分と同一視してプレイできない。そのためギャルゲーの楽しみ方の1つ「主人公に自分を投影してモテモテムーブを味わう」ができません。他人の恋愛を横から見てる感がすごい。

つまらなさすぎて激おこぷんぷん丸バースト。同僚を問い詰めました。

「【エクストラ編】を乗り越え、最後までプレイした勇者だけが、味わえるものがあるんですよ…」

鑑純夏ENDと御剣冥夜ENDをクリアすると【アンリミテッド編】というパートが解放されます。なんじゃそりゃ。しかしこのアンリミテッド編はエクストラ編とガラッと雰囲気が変わります。

 

繰り返しになりますが、このエクストラ編は面白くないです。ギャルゲーに耐性がある人、ないしエロ目的の人でないとやり切ることも難しいでしょう。「進撃の巨人」のどこにもマブラヴの影が見えないし。同僚が大言壮語した割には退屈というのが本音。(なお、わたしの推しヒロインは綾峰です。ただ一番好みに刺さってる涼宮茜が攻略対象キャラではないのは腑に落ちない。だってCV水橋かおりだよ?好きにならないってのは無理な相談ですよ)

ただ、ここでやめるか続けるかが大きな分水嶺です。
後ほどこの退屈、ありきたり、凡庸、といった評価が激変してしまうのです。


■ネタバレレベル2 (アンリミテッド編ってなんなのよ、ギャルゲーじゃないの?)

 

アンリミテッド編は様相をガラリと変えます。

ゲーム的な面白さは皆無で続編であるMLA編へのつなぎでしかありません。もはや制作側の「ぼくの考えた面白い物語」の押し付けは隠し切れないものになっています。だってEDの分岐が終わり間際の選択だけで変わるっていかがなものよ?

でも面白ければ許す。

 

〇あらすじ

俺こと白銀武はいつもは起こしに来る純夏を待たずに目を覚ました。
いつもならとっくのとうに来ている時間のはず…あいつめ寝坊したな!
冥夜も見当たらないし、先に登校したのか?

訝しみながら玄関を出ると、あたり一面が荒廃していた。

家々は倒壊し、道はひび割れ陥没している。
昨日までの町じゃない…一体ここはどこなんだ?

純夏は!?隣の家には大きなロボットが突っ込んで大破していた。
武がプレイしていたゲームに出てくるバルジャーノンみたいだ。

そうか!これは夢なんだ。こんなこと現実に起こるわけがない。
町に人気もないし、とりあえず学校に行ってみよう。

なんだか物々しいなぁ、守衛さんも武装してるし…と思っていたらなんだか拘束されて牢獄に入れられてしまったぞ!?夢にしてはやけに物騒だ。

でも、夕呼先生が来てくれた。なんだかいつもと様子が違うけれど、先生ならここからだせるんでしょう?冗談ばかりいってないで出してくださいよ


「私はあなたなんて知らない。夢?何を言っているの?」

 


はい、といことでナウい言い方をすると異世界転生しました。
エクストラ編では健在だった街が荒廃していることからわかる通り、時勢が全く違います。それもそのはず、戦争中なのです。誰と?宇宙人と。

主人公である白銀武は、エクストラ編では学校だったはずの軍基地に訓練兵として所属し、宇宙人との闘いに備えることになります。この宇宙人のことをML世界ではBETAと呼称しています。(人類に敵対的な地球外起源種=Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human raceの略)

ちなみに人と呼べるような姿形は全くしておらず、気持ち悪いです。こんな風貌の宇宙人が大挙して襲ってきたら失禁は免れません。(そういえば進撃の巨人もそうだなー)

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BETA いくつか種類がいるがそのうちの1つ「兵士級」と呼ばれる個体 キモイ

彼らの戦略は物量に物を言わせた制圧戦です。リアルにおっかない戦術です。人類は数という一朝一夕ではどうにもできない圧倒的な戦力差にて敗北の淵に立たされています。それにBETAとはコミュニケーションが取れません。奴らが何を考え、何を望んで行動しているかさっぱりわからないので「やられる前にやる」戦法しか手がありません。

 

あんなもキャッキャうふふしていた世界から全く別の世界に来てしまいました。落差にびっくりします。

ヒロインたちも、出自を若干変えてはいますが、ほぼそのままの姿で登場します。ただ、彼女たちにエクストラ編(別世界)の記憶はありません。しかし親友だった鎧衣尊人が性転換してしまうとは…それにエクストラ編ではサブキャラだった夕呼先生の重要度が爆上がりしているのには驚き。

一応各ヒロイン毎のEDはありますが、ギャルゲー要素はほぼ消え失せています。(だって終わり間際の選択肢を変えるだけでそれぞれのヒロインのルートに行けちゃうんだぞ…?ちなみに夕呼先生ENDもあるぞ!)

 

そのため、もっぱら主人公と同じく「この世界はなんなのか?」という疑問を抱きながら、ずるずると時間が過ぎていき(シナリオを読んでいき)終わります。

唐突すぎる世界観の変更、理不尽かつ暴力的な侵略におびえる人類、と情報が一気に叩き込まれ頭がパンクします。もちろん主人公もそうです。宇宙人と戦争しているといっても、現実感はありゃしない。元の世界では学校だったところが「国連太平洋方面第11軍・横浜基地衛士訓練学校」に様変わりしているので、彼もBETAと戦うために訓練もします。しかしどこかふわふわと浮ついた気持ちで日々を過ごします。主人公のモチベーションは訓練課程の後期にある「戦術機」と呼ばれるロボットに乗ることであり、戦争をするためではありません。シリアスな世界のはずなのにどこか遊び気分の主人公のため、プレイ中もストーリーにのることもできません。

ただ気にかかるのは「鑑純夏」がこの世界にはいないこと。

それなのにやることやってる武にはにっこり笑顔を向けちゃうね!

 

彼女はどこに行ったのか?このゲーム内では答えはわかりません。彼女と似た言動や行動をする「社霞」という少女の謎も深まるばかり。なんだこれは、ゲームとしての体をなしていないじゃないか!生殺し状態だよこっちは!


MLAが続編なのですが、発売まで3、4年あったようで当時のユーザーはふざけんな!
という気持ちになったことでしょう

面白い、といより「続きが気になる」状態になりました。そうなった時点で制作者の思うつぼな気もするのだが、まぁいい。最後までやり遂げてやろうじゃないか!

 

ただ、ゲーム的な快感は皆無です。先述した通り、ギャルゲー要素は杏仁豆腐に添えてあるクコの実程度のものに成り果て、ストーリーを語るためのギミックと化します。もはやゲームという名を借りた画と音が付いた「ビジュアルノベル」であるといってもいいでしょう。だから面白さも、ストーリー展開やキャラクターの個性に寄ってしまうので語れば語るほどただのネタバレと化すという。演出的なこともギャルゲーなので言ってしまえば紙芝居の延長。驚きや新しさは感じません。

しかし設定好き人間は面白がれる作品だと思います。この世界ならではのそれらしい用語や歴史が、テキストでつらつらと流れていく分量は中々のもの。夕呼先生、長広舌です。ただこれは20年くらい前の作品なので、目新しさは感じにくいです。

 

ただ「何も聞かずにやってください。幸せっていいもんです」にはまだ到達しません。ここまででプレイ時間は20時間くらいはやっているのに。しんどい。

おい、てめーつまらんぞ!どこがおもしろいんですかぁー?

 

 

■ネタバレレベル3 (で最後までやってみてどうだったの?)

 

MLAを実際にプレイしてみて、これはタブラ・ラサ(白紙状態)でやらないと作品の面白さを十分に味わうことはできないと思いました。ここまで読んでちょっとやってみよっかな、と思った人は続きを読むのをやめてプレイしましょう。同僚に感謝…!

プレイするのにあたって注意が必要なのはボリュームです。わたしはMLA編だけで約24時間くらいかかりました。このボリュームは易々とやってしまえる量ではないです。

しかしストーリの分岐は皆無。にも関わらずこれだけのプレイ時間がかかったということからそのボリュームを推し量ることができます。MLのアンリミテッド編と同様ゲーム的な面白さはゼロ。にもかかわらず、こんなに余韻を感じるとは。

この分量も曲者でストーリーが「長い」ことで結末を迎えたときのカタルシスはより大きくなります。主人公の白銀武はこのMLA編で人との戦争を経験し、地球外生命体のBETAの侵略に仲間とともに立ち向かいます。艱難辛苦(モニター見すぎて目がショボショボ)を乗り越えたからこその最後の結末がより引き立ちます。

 

〇MLAあらすじ

白銀武は眼を覚ますと初めてこのBETAとの闘いがある世界に来た時と同じように自室いた。なぜか時間も巻き戻っているようだ。

一体なぜ?それにどうして自分だけが?

まぁいい、前の世界(MLアンリミテッド編)の記憶はある。人類がBETAに破れ、地球から逃げ出すしかなかった世界の記憶が。まだ生きている人々を見捨て、しっぽを巻いて逃げるしかなかった結末が…

武は決意した。もう、同じ轍は踏まない。BETAを地球から駆逐し、地球を滅亡の淵から救うんだ…この経験と知識を生かして今度こそ地球を、人類を救って見せる!

 

ここでこれ以上ストーリーの内容を順を追ってくどくどと説明することはしません。しようとすれば紙幅が尽きます。(というか、書くのが大変で…怠惰でスミマセン)

  

まずこのMLA、主人公への追い込みっぷりが半端ではありません。

 

MLAでは彼はBETAと戦う軍人として生きる覚悟を固めていました。

それもそのはず、マブラヴの最大の謎である「武がなぜ異なる世界を行ったり来たりしているのか?なぜ他の世界の記憶があるのか?時間が巻き戻るのはどうして?」という疑問には一切答えが出ないからです。移動する理屈についてそれらしい話はしますが、根本的な原因は判明しないまま話は進んでいきます。その過程で別世界への移動方法を見つけますが制限付きという不完全なもの。

半ばもとの世界に戻ることもあきらめ、冥夜や夕呼先生、一緒に訓練を重ねた仲間達とBETAに打ち勝とうとします。それはかつての自分と決別し、安逸で怠惰だった日々に戻らず、血肉まみれる戦場へと向かうことも意味します。

中盤で、MLアンリミテッド編では登場しなかった鑑純夏が現れるのもこの世界で生きる覚悟を固めた一因です。「彼女だけは守る、決して 不幸にさせないッ!」青臭いッ!だがそれがイイ!ここで変に斜に構えられても困りますしね。うーん、少年漫画っぽい。

前の世界の経験を活かし、武はメキメキと戦術機のエースパイロットとして頭角を現します。多少ずるいですが、何にも役に立たない置物主人公では純夏を守れませんからね。いいでしょう!

 

しかし、他の世界を知っているが故に武はなじめません。人は戦争のために消費され、国や軍といった集団の中に資源として組み込まれます。国は軍国主義になっており、物語では【国至上主義】のイデオロギーが滔々と語られます。(なおBETAに侵略され始めたのは第二次世界大戦後の1960年代という設定です)

 

いざ初戦闘となったら、BETA戦うために訓練していたはずなのにまず人と争うことになり戸惑いを隠せません。政治ゲームに駆り出され、駒として動かざるを得ない軍人の立場に疑問を抱くが封殺されるしかない。

それに自分なりに折り合いをつけていたところにBETAとの初戦闘。優秀な軍人だったはずなのに、恩師(エクストラ編では担任の先生のまりもちゃん)を目の前で食い殺される。増上慢であることを思い知らされ、自らを支えていたBETAから人類を救うという覚悟を砕かれる。

別世界に逃げても、自分が原因でまりもちゃんは同じような状況で死亡。別世界の因果がこの世界に影響を与えているのだという。当人の知らないところで彼は災厄をまき散らす存在に成り果てていた。

その上、武と親しい人ほど彼のことを忘れていく現象が発生。武のことを忘れない、と誓った純夏でさえも…もはや武がこの世に生きていた証さえなくなる。

 

えー見ているだけで気の毒です。エクストラ編のおバカな彼を見ている分、気の毒度がマシマシです。彼にとっては理不尽なことばかりです。

とくにまりもちゃん死亡シーンはかーなーりショッキングです。ゴア表現がえぐい。BETAが僕の考えたおぞましい生物!という感じでおぞましい造形をしている上、顔面を食われているので何も知らないで見てしまうと、えずいてもおかしくないです。(安易に検索しちゃダメ)

うん、これは心折れてもおかしくないですね!

この主人公の追い込みっぷりは中々のものです。制作陣の本気度、悪意がうかがえます。後半の因果や忘却に関してはガバガバ理論で構築されているのですが、そういうもんだと思いましょう。

しかし、ここでエクストラ編で自分がうすら寒いと言っていた絵日記パートが牙をむきます。純夏は武を忘れないために欠かさず日記を書いており、絶えず読み返していた。そんなの聞されたら胸が詰まっちゃうじゃない、なにこのいとけなさ!

 

上記の展開が息もつかせず怒涛のように訪れます。でも、だからこそこの後の立ち直る時に拳をにぎりしめれるんです。ここが半端だったらここのドラマはちんけなものになっていたでしょう。「主人公は徹底的に追い込め」ということかな?

 

この世界を成り立たせる根本の設定は納得できるものです。地球外生命体によってあらゆる文化や歴史は一変しているので、きちんとそれに準じたキャラクターやギミックがあるべきです。その点、そこそこしっかりやっています。よく考えればガバガバだとは思うのですが、このゲームやっている時に気にならなければOK牧場

 

個人的に息を漏らしたのは次の2点。

・BETAによって対空攻撃がほぼ無力化されている。だから戦術機というロボットに乗り込む必要がある。

兵器がロボットでなくてはいけない理由がしっかりしている作品って実はあんまりないです。でも、かっこよければいいというのはわかるので普段はあまり気に留めませんが、その分しっかりやっている作品には好感が持てます。

 

・現役の軍人には女性が多数を占める。これまでの戦いで男性は損耗してしまい、適齢の男性がほぼほぼいないため

そう、女性キャラの登場比率が多いのはアダルトゲームだからではありません!れっきとした理由があるんです。ええ!、絵面的に華が必要だからじゃあないんです。

 

だからかこのMLA編、新女性キャラが多数登場します。

白銀武が配属される部隊「特殊任務部隊A-01(VFA-01)」にいる軍人みな女性。

しかもこれがいい具合に自分の琴線に触れてくるんです。

 

ああーーーっ!姉御肌ポジはダメェ!趣味に刺さっちゃうぅぅぅぅ!しかもニヒルなんでしょう?斜に構えてるんでしょう?ごちそう様です!

えぇ?過去の不遇を乗り越えて活躍してるんですかぁ!?薄幸ッ!薄幸なんですか!しかもおしとやかで芯が強いんでしょう?あなたは僕が守ります下がっていてください。

でもやっているのは戦争です。

しかも相手はBETAという人外の存在。大量の物量で人類を絶望に叩き込みます。

無論奮戦するのですが衆寡敵せず、命を落とす隊員も…

天網恢恢疎にして漏らさず!

BETAめ駆逐してやる!きさまら絶対に許さんぞ!

 

で、大仰に言っていると思っていた

「何も聞かずにやってください。幸せっていいもんです」

の意味、最後までやってようやくわかった…

 

ズバッというとMLAは白銀武と鑑純夏の恋愛物語が世界の行く末に直結する「セカイ系」の話です。そう聞くと他にもいっぱいある作品群との差異は感じにくいのですが…作品自体2006年のものなので

メインヒロインの鑑純夏はMLA編の中盤以降に登場して、人ではなく兵器として人類vsBETAの戦いの行く末を左右するファクターとして扱われます。彼女がMLアンリミテッド編では見当たらなかったのはその時点で【人】としての鑑純夏はすでに死亡していたからです。彼女はBETAに囚われ、ありとあらゆるおぞましい行為をされたのち、脳髄だけの状態になって試験管に入れられていました。補足ですが、このMLA世界の白銀武も純夏をBETAから庇い、襲われほぼ同時期に死亡しています。

その人とは思えない状態で人類に発見され保管されていたところ、この危機的な戦局を打破するために全く意思の疎通が取れないBETAとのコミュニケーションを取るための機械の素体として転用され、人の外見を与えられた生体コンピューターになりました。彼女は00ユニット(生体反応ゼロ、生物学的根拠ゼロの非炭素系疑似生体ユニットの略)と呼称されています。

つまり、MLA編の彼女は【物】 として扱われているのです。

出自がまたハードでしょ…おじちゃん目も当てられなかったよ。

ありとあらゆるおぞましい行為って要するに凌辱です。今回プレイしたのがR18版でなく、全年齢版だからまだマイルドでしたがこれがR18版だったらと考えるとエグイ。BETAめ…駆逐してやる!絶対に許さんぞ!

(最後までプレイした後に調べましたがよい子はみてはいけません。ダメ絶対)

 

要するに鑑純夏は対BETAに対する最終兵器彼女的な存在ということです。

その彼女に幼馴染である白銀武が及ぼす影響はあまりも大。ましてや彼女の感情如何で兵器としての性能に乱れが出てしまうとあっては到底無視できるものではありません。白銀武と鑑純夏の行く末が、世界の行く末と連動します。

異なる世界間を移動する白銀武にとっては世界はいくつもあるものなのではっきりさせておきましょう。この【世界】という言葉が指すのは白銀武がやり直している「BETAにに侵略され息も絶え絶えな人類が暮らし生きている」MLAの世界のことです。

 

ここで、ギャルゲーである最初のMLの話に戻るのですが、主人公の選択によって恋仲になる対象が変わります。だってギャルゲーだもの。ゲーム内の次元で言えば1つのEDは主人公=白銀武が選んだ結果存在した1つの世界です。この次元で言えば、主人公含め他登場人物はそのことに感知することはできないはずです。

ギャルゲーでは1人のヒロインを選んだが最後、他の結末に到達することはできません。それはあってはいけない世界だからです(少なくとも一夫多妻制を容認していない世界観ならば、なお個人的にはハーレム系の作品は好きではない)。1人を選ぶということは、他のヒロインを選ばないということを意味します。

しかし、このMLAではそのありうるはずだった世界は確かにあったものだと肯定してしまいます。メインヒロインである鑑純夏以外の冥夜やその他を選んだEDすら、それは白銀武が経験してきたものであると。その上で、SF的なギミックを使いながら鑑純夏との恋愛に物語を収束させます。

つまりMLの最大の謎である「武がなぜ異なる世界を行ったり来たりしているのか?なぜ他の世界の記憶があるのか?時間が巻き戻るのはどうして?」という問いに対する答え=【このMLAの世界で助けを求めていた鑑純夏が白銀武を呼び寄せていた】からです。

だから何度地球が滅亡しても彼だけは何度でも甦り、純夏を助け、彼女が望む世界にしなければいけません。このMLAの世界の構造が白銀武にとって檻であり、軛です。

 

これが衝撃でした。他ヒロインとのEDをあったことにしてしまうの!?あれは確かにあった世界として認識してしまうの!?と。確かにメタ的なプレイヤー視点で言えば、あって当然のものだし、ないと恋愛アドベンチャーゲームではなくなってしまうのだが、このゲームの中の次元でそれを包括してしまうとは…唖然としました。

ゲームの構造上、どうしても避けることのできないマルチエンディング。このマルチエンディングは制作側がある意味で正解と提示する物語=トゥルーエンドと同じにすることはできません。なぜならそれは【もしかしたらありえた結末】というの仮定の話であることが求められているからです。プレイヤーはその【もしかしたら】という不確定なものに対して、選択権を得ることで、ゲーム内では神様として振る舞うこと(ギャルゲー的に言えばどの女の子を選ぶこと)で娯楽を得ます。

 

それをトゥルーエンドになくてはならない要因として持ち込むこと。それすらもMLAを語るシステムと転化させること。嘘だろ!とぞくぞくしました。

兜を脱いで襟を正します。 あっぱれとしか言えません。

 

そして、物語の最終局面で行われる大規模な反攻作戦の「桜花作戦」にてMLでヒロインだった人物は最後にはみな戦死します。しかも鳥のまさに死なんとする、その鳴くや哀しとまぁあえないこと。その死に様は「ここは任せて先に行け!」の連続。

最後、主人公と鑑純夏は目標を攻略、撃退することができるのですがなんやかんやで純夏も死亡します。最後に残ったのは白銀武だけ。しかし純夏は満たされて死んでいきました。そのため武も元の世界に戻れるはずだと。

彼はBETAなんていない世界を知っています。鑑純夏が隣にいる世界を知っています。人類がBETAに敗北した世界を知っています。彼が見ているものは他の人が見ているものとは違います。今の彼の目的はBETAを倒し、人類を救うことですが、もともとは元の世界に帰るというものでした。

しかし、このMLAの世界で過ごしていくうちにこちらの世界も大事なものに変わっていったのです。最後には人類は救えたが、自分の回りの人はみな亡くなってしまった。彼女たちの犠牲がなければ、作成は成功しなかったとはいえ男泣きせざるを得ません。その胸の内はめちゃくちゃになっているのでしょう。

 

事実、武は元の世界=MLの世界(厳密にはとちょっと変わっている世界だが、BETAなんていない世界)に戻ることができるのですが、その際にMLAで起きた出来事はおぼろげな記憶になっており【夢】であると錯覚します。あれだけ苦難を乗り越え、死力を尽くして、激闘につぐ激闘を重ね、たどり着いた結末を夢としか認識できないのです。やるせねぇ…

ただ、彼が望んだ最初の願い、元の世界に変えるという願いは叶っており、MLAでは戦死したみんなも幸せそうに幸福を享受しています。でもやりきれない…でも幸せそうだ…ハッ、そうか…ML編の退屈さはここにつながるのか…!と得心しました。

ここで「退屈、ありきたり、凡庸」だったMLの評価が激変してしまうのです。むしろ退屈でありきたりで凡庸でないといけないんだと。

 

オルタネイティヴAlternative で意味は「「AとBから1つを選ぶ」、すなわち「二者択一」という意味。また「Aに代わるB」という意味もあるとのこと。

このうちAは、多くの場合「既存・主流の何か」を意味します。そこでオルタナティブは「既存・主流のものに代わる何か」という意味でも使われます。例えば「オルタナティブな政策」とは「既存・主流のものに代わる政策」を意味します

三省堂 WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond-より

 

 含蓄があるサブタイトルだなぁ。

武がつかみ取った未来は幸せなものだと思いたいです。