狐が風鈴を鳴らす

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今更『トム・ソーヤーの冒険』

 

introduction

世界で一番有名な子供といっても過言ではないのだろうトム・ソーヤー。少年文学の傑作!ですが、もしかしたら一番読んではいけない時に読んでしまったのではないだろうか?

 

plot summary

茶目っ気たっぷりのわんぱく少年トムは、街の浮浪児宿無しハックを相棒に、いたずらの数々……そんな一人の少年の歴史。

 

 

author

19世紀のアメリカを代表する作家マーク・トウェインです。なんでもペンネーム、マーク・トウェインとは二尋の意らしい。(二尋=約3.6メートル)

この作品にも表れているように、粗野で明るく健康な民衆の生き方を瑞々しく書いた作家。いわゆる田舎のいい人、と言ったら思い浮かべるステレオタイプもこのような作品の影響が大きいのかなぁ。

 

review

 

面白かったです。面白かったですよ。けど、時宜を外したーという思いが拭いきれません。大人と子供は読んで素直に面白い!と言うだろうけど20代前半という成熟した大人とも言えず、さりとて子供というには年を取りすぎている年齢にとって、この本は「ああ、うん、そうだよねー」でした。

 

・子供視点

トムに共感しっぱなしでしょう。またトムに共感できなくても、時折顔を出す、あまり目立たない子らもいます。そしてトムの拙い恋の対象となる女の子もいます。

大人の不条理さ、勝手さ、等々押し付けられて不満たらたらのトム。それもトムのことを思ってのものですが、子供にはなかなかわかるものではありません。

手伝いをサボり遊びに行くトム、お仕置きを受けるトム、いたずらをしたくなるトム。楽しいだろうなぁ!という毎日を過ごしています。

墓地で殺人を目撃したり、海賊になりきって数日冒険旅行をしたり、気になっているあの子にアプローチを仕掛けたり。うーん羨ましい!ぼくもやりたい!

毎日がいいことだらけではないですが、ほんとうに満喫している人生です。

 

・大人視点

トムというクソガキに悩まされる大人たちに共感できます。

言うことは聞かない、いたずらはする、心配はかける。わかるよウンウン。腹はたつし、なんとかして更生させようとするけども上手くいかない。怒りを爆発させることもあります。

が、決してトムが嫌いなわけではないのです。むしろ愛しています。愛と憎しみは表裏一体です。そういうことです。わかるよウンウン。

 

また子供時代を懐かしんで感傷に浸ってしまうこともあるでしょう。「ああ、ぼくも/わたしも子供のころ、こんなことやったなぁ。そうそう、ついつい見栄を張りたくなっちゃうのよ……」とか「こんなやつ、ぼくの/わたしの周りにもいたなぁ……」とかトムたちの行動に引かれて、自分の経験を思い出してしまいます。

過去に思いを馳せるのはたまにするのなら楽しいものです。思い出したくないようなことも、時間が経てば笑い話になります。

 

・ぼく視点

 

ああ、うんやっちゃうよねー……、大人も大変だなぁ。そうだよ狡い大人もいるんだよ。いや、おばさんあんたは正しいよ。鞭でぶっちゃえ!おー、ベーコン美味そう。

 

はい、どちらにも入れ込むことができませんでした。どっちのやってることもわかる。加えて、なつかしむほど子供時代は遥か彼方というわけでもなし。実子がいるわけでもないので大人にも深く共感できるわけでもない。

これが青春真っ盛りのティーンエイジャーならば、「ばかじゃねえの!」と子供たちを一笑に伏すこともできたでしょうが、もう20代です。そんなこと言えません。

読んでいて一番つまらない時期に読んでしまったなぁというのが感想になってしまいました。ほんと、読んだ時の年齢で感想が大きくちがうだろうな、という本でした。

 

そんなことは言っても、魅力がないわけではなく、無邪気ながら多少の意地悪さを含んだ言葉の応酬。ヘソを曲げて意地をはるこどもの様子。楽しいです。悪いやつが懲らしめられるのは読んでスッキリします。(しかし死に方が少年文学にしては壮絶)ただわんぱく小僧がわんぱくしてるだけの本ですが、それがここまで面白くなるのはすごいです。子供を子供らしく書くのはすごい難しいのだ。

物々交換している場面がすごく好きです。背伸びをしてタバコを吸っているところがいいです。

「タバコを吸う人を見るたびに、おれもすえたらなあと思ったもんだが、自分にもすえると思ったことは一度もなかったよ」byトム

キラキラしてる子供時代っていいもんだ。

 

 

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)