狐が風鈴を鳴らす

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『スチームオペラ』 それはニッチ

スッチィィィィィムパァァアァァァァァンンンンンクゥゥゥゥゥゥ!

 

あらすじ

蒸気機関を主な動力源とする大都会に暮らす少女エマは、空中船《極光号》の船長を迎えるため港への道を急いでいた。船内の一室で、ガラス張りの”繭“に封じられた少年を発見し、解放してしまったエマは、彼と共に、その場に居合わせた名探偵ムーリエに弟子入りして都市で頻発する不可能犯罪を調べることになり……

文字だけでは何のこっちゃというあらすじ。もう読んでちょ、と言いたいがそれだけではなんとも面白さが伝わらない。

まず作者について触れよう。

彼の名は芦辺拓。真不思議且つ巫山戯た小説を書くわたしの好きな推理小説作家の一人。出会いはなんかのアンソロジーだったがその時に読んだかれの作品がいい具合にすっとぼけていた。

デビュー作は『殺人喜劇の13人』最近創元推理文庫から復活しました。第一回鮎川哲也賞受賞作となっておりますこちらの作品とても推理小説らしい推理小説です。好きなものを詰め込みました!というのが伝わって来る。

その後もニッチな小説を書いて行く、とさも読んだかのように言いますが、わたしこれと今回感想を書いている『スチームオペラ』しか読んだことないです。それでも恐らく同じような趣味傾向持ってんだろうなぁと勝手にシンパシー。

『殺人喜劇の13人』に関しては殺人の動機が安っぽいところが好きです。サークル内で次々人が死んでゆくその様がいいです。まずこれを読めば芦辺拓という作家がおおよそ掴めるのではないでしょうか。

そして今回の『スチームオペラ』です。スチームパンクに推理要素ぶっこんでごった煮にしてみましたという混沌具合を発揮します。

最初は「おーSFだぁ」殺人事件が起きてからは「ええ、そんなのありかよ……」クライマックスに至っては「遊びすぎだ」そして大団円では「や・ら・れ・た」でした。

久々にやられたーという声を出した気がします。ボーイミーツガールで主人公はちょっと活発な女の子、16歳でお父さん大好き。感情を素直に出し、久しぶりに見た応援したくなる女の子主人公です。ちょっと小狡いのはご愛嬌。ボーイの方はまあうん、聡明な悟ったようなエマとは反対の気質で、感情は出しません。

ボーイであるユージンの正体は何か?というのが大きな謎の一つでもあるけど全くと言っていいほど興味が持てなかった。エマがんばれ、エマの親友サリーかわいいというガールズサイドに肩入れをしっ放し。男性陣に魅力がないのが残念ポイント。特に探偵のムーリエさん。あんたねーと一言申したくなっちまう。最後まで読めば”別の意味で”仕方ないか思えてしまうが……。

 

スチームパンクを舞台にした推理小説ながら、進行する物語はいたって王道。多分ここまでへんにしたら収拾つかなくなるからだと思うよ!

SF:推理=7:3ぐらいの割合の印象。読後はまた違うけど……。

SF推理小説というよりSF冒険活劇の方がふさわしい呼び名ではないだろうか。

しかし最後はやられた。んーあくまでぼくの主観だけど『占星術殺人事件』よりやられた度は高い。内輪ネタ感もあるけど。

推理小説部分もあるけどSF小説としての方が楽しい。エーテル推進機ってなんじゃらほーいから始まり、いま我々の世界で重要な石油がゴミ扱いされていたりするところから、大都会の中を剥き出しの戦斧をもって闊歩する漆黒の黒人(この人すごい面白い)に蒸気遠隔印字機(ってどんな形だろう)。

倫敦はこう進化したかー。ほー。

  

P・S

最近表紙がイラストの本が多いよねー。文庫もツルツルした加工紙ばっかになっちゃって。どんどんツルツル度が増してきてるよ。発色を良くするため?まあイラスト表紙が増えたことも一因なのか。