常々感想記

本 映画 音楽 その他諸々の雑感を書き連ねるブログ

2016-01-01から1年間の記事一覧

『私の殺した男』また、殺した男に私は

あらすじ 第一次世界大戦が終わるも戦争中に殺した男のことが忘れられないフランス人のポール。彼の死体の傍らには恋人に宛てた手紙があった。懊悩するポール。人を殺した罪を戦争のせいにすることができず、自らの罪だと常に悔いる。 そしてポールは自分の…

『1984年』は何時?

『未来世紀ブラジル』を思い出した。それもそのはずでこの映画は1984年版『1984年』だとギリアム監督は言っていたそうだ。この出典はWikipediaだが信用していいだろう。それほどまでに根底にあるテーマ、扱い方はちよっと違うけど…は似通っていて全体は個に…

『スチームオペラ』 それはニッチ

スッチィィィィィムパァァアァァァァァンンンンンクゥゥゥゥゥゥ! あらすじ 蒸気機関を主な動力源とする大都会に暮らす少女エマは、空中船《極光号》の船長を迎えるため港への道を急いでいた。船内の一室で、ガラス張りの”繭“に封じられた少年を発見し、解…

『夏の夜の夢』間抜けたちの狂想曲 

愛すべき間抜け。間抜けかわいい。 あらすじ(夏の夜の夢) 妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ薬を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇。 アテネの王様シーシ…

『蒲団』もふもふ

蒲団という題名だけしか知らず、いつ頃の作家なのかも知らず。今回紐解けば日本の私小説の先駆けとも言える小説だったそうな。私小説というよりか自然主義の代表作として解説には書かれていた。 私小説は自然主義の大枠の中に入るのだろう。そもそも自然主義…

服は人なり!(カエアンの聖衣)

”服”からよくここまでの大法螺が吹けるのだろう。発想が普通じゃないよ。バリントン・J・ベイリーはすげえなと改めて思う。 あらすじ 服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対するザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。…

伽藍が白かったとき、とはどんな時代だったか

著者はル・コルビジュ。建築家。建築界では有名な人で建築やってる人で知らなかったらおそらくモグリでしょう。たぶんね。 建築家でありながら本も多数残している筆まめな人でもあります。「本を書くのは大嫌い」と本人は言っているらしいがそれでも本を書く…

わたしを離さないで

Never let me go=わたしを離さないで カズオ・イシグロの小説。わたしにしては珍しく、読んだ本 つまり”わたしをはなさないで”について他の人と話す機会があった。珍しいではなく初めてかもしれない。話の核心に触れていくので未読の方はご注意。 あらすじ …

BANANA FISH 

バナナフィッシュは死を呼ぶ魚として名を知られている。サリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』という短編に登場しており、バナナ穴に入ってバナナを食べ、そして死ぬしかない魚。 そんなバナナフィッシュが題名なこの少女漫画。吉田秋生といえ…

『第三の魔弾』の完璧さ

勘違いしたまま読んだけどそれでも面白い。 レオ・ペルッツ『第三の魔弾』 あらすじ 神聖ローマ帝国を追放され、新大陸に渡った”ラインの暴れ伯爵”グルムバッハは、アステカ国王に味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッ…

チェロよ、しばし別れ

チェロに惹かれる。 だから初めて自分の意思でコンサートに行ってきた。以前言ったがコンサートとかライブは好きじゃない。一回も行ったことないくせにどの口が言うか!自省の意味も込めて初めてのコンサート。チェロとピアノ。 渋谷からほど近いけやきホー…

THE HATEFUL EIGHT 

おやおや、おっさんばっか。毛色が違う?雪山の山荘に閉じ込められたジジイ達の話。西部劇の時代、南北戦争直後。白か黒、もしくはインディアン。飛び散る肉片、吐き出す血飛沫、口から出るのは出鱈目だらけ。 みたら通常運転タランティーノ。 あらすじ 猛吹…

悉皆屋康吉

舟橋聖一は風俗小説。そんなイメージ。 『芸者小夏』もそうだった。この『悉皆屋康吉』もそう。だけれどもそんなジャンル、そんな区分をされていようと関係ない。これはいい小説。好きだ。 あらすじ 呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者である悉皆屋…

デジモンを待ちながら(デジモンアドベンチャーtri第2章決意 感想)

「つまらない……」 見終わって最初にいった言葉。苦笑いしながらいったけれど、内心はひどくがっかりしていて、失望を通り越し、そして怒りにまで達しようとしていた。 さあここからは貶しに貶すぞ。めっちゃ悪口いってやるよ!だってつまらなかったんだもん…

クナウスゴール氏の歓迎会ーぼくは英語ができないので歓迎の意が示せないー

3月4日 ノルウェー大使館で開かれたクナウスゴール氏のイベントでは、終了後インフォーマルな歓迎会が開かれました。ささやかなもので、格式張ったものではないと。立食形式で、このイベント参加者はそのまま参加できるとのこと。 そんなもの一度も参加し…

徒然なるままに 「クナウスゴール語るー『わが闘争 父の死』、ノルウェー文学、そして世界」

2016.03.04 18:56 開始時刻寸前に目的地に到着。その割に席が埋りきっておらず、(隅っこは埋まっているが真ん中の方は人と隣あわせにならずに座れてしまう程度)一息ついていそいそと座る。オーロラホールという大仰な名前とは裏腹に、小ぶりのホール。しか…

ホワイト・ジャズ

暴力/腐敗/権力/政治/麻薬/密告/恐喝 言えることはひとつ。 エルロイはぶっ飛んでいる。 吐くのは保身のため、遠慮なく自らのために情報を売り流す。ここじゃあ誰彼だって俗に言う犯罪まがいのことはしているんだ。そんなところで我が身を大切にしなけ…

アンダーグラウンド 

テッテッテーテ・テッテッテーテ・テッテッテーテ・テッテッテーテブパパパブパパパブパパパブパパパテェレーンテェレーンテェレーンテェレーンテッテッテ…… 日常/戦争、響く音楽、踊れよ踊れ。ぼくらはみんな一生懸命。つまり喜劇。 あらすじ 1941年4月6日…

オデッセイ

マット・デイモンが全て マーク・ワトニー=マット・デイモン、になった時映画は完成した。 あらすじ NASAの有人火星探査計画、アレス3のクルーは大規模な砂嵐によって火星でのミッションを放棄。退避する途中、クルーのひとりマーク・ワトニーにアンテナが…

クロニクル・アラウンド・ザ・クロック

小説で音楽を扱うことは難しい。音は文字に置き換えることはできない。音楽をメインに据えるということはそれだけで水の中で息をしようとするようなものだろう。 『クロニクル・アラウンド・ザ・クロック』略してクロクロ。 あらすじ 幼稚で痛々しいわたしの…

コンドル(1975)

R・レッドフォード主演のポリティカルサスペンス。 これを面白いと思ったら大人。 あらすじ ジョセフ・ターナーはCIAの分析官。仕事は世界中で出版されている本や雑誌を読み、情報分析を行うこと。所属している第17部9課は、アメリカ文学史協会として表向き…

「コードネームU.N.C.L.E」と「キングスマン」

文芸座で二本立て上映されていた。 "U.N.C.L.E"は見逃していたので行くしかないと。 キングスマン あらすじ キングスマン。それは高級テイラーの名前。しかしそれは表向き、実はどんな国にも属さず、世界の平和を守り続けるスパイ組織だった…… 母の再婚相手…

アメリカ大陸のナチ文学

帯の背中に書いてある文句が「悪の輝きを放つ作家たち」。 悪の輝き、とはどんなものか。黒い光、それとも悪の意志を秘めて光ることか。輝くというより光を携えると言った方がいいのか。一体悪の輝きとは? あらすじ……といってもあらすじというあらすじがな…

フェルマータァァァァァァァァァァァァ!!!!!

指を鳴らしてみたり、メガネを指でクイッと押し上げたり、独自性を出し信号が赤になる瞬間に横断歩道を渡りきったり、足で5拍子のリズムをとってみたり、レシートを受け取るさいに絶対に小銭を重しに使わせないように努力してみたり。 ああ、ぼくもフェルマ…

グレン・グールドは語る、が何を言っているかぼくにはさっぱり

1974年8月15日発行のものと、次の8月29日、二号に渡ってローリング・ストーン誌に掲載されたグレン・グールドへのロングインタビュー記事に、補填や資料を加えた本。 グレン・グールドが自らの音楽、思想や理念をつまびらかに語るのですが……。 グレン・グー…

ワルシャワ・ゲットー

第二次世界大戦時、最大の受難者はユダヤ人だった。 彼らは排斥され、隔離され、処理された。ユダヤ人は人ではなく、羽虫のようにあっけなく命を散らしていった。奴隷以下の扱いを受け、そこを歩いていたから、という理由で殺されることはおかしくもなんとも…

深夜の人 結婚者の手記

日記や手紙、詩歌、随筆など集めて編纂した本。 素直で実直、だというのがぼくの室生犀星への印象。 彼の作品にでてくる人たちは、生きているというか鮮度が高いというか。自らの感情にいちいち理屈をつけたりしないところが好きだ。それにこの作品集は随筆…

モネ展

昨年9−12月にかけて催されていたモネ展。 こっそり参戦していたのだ。美術館で行われる企画展示はいかないこともないが、今回のモネのような芸術大家の展示は初めてである。無論美術にたいする知識は皆無! クロード・モネ フランスの画家。印象派の大家で19…

正義と法の狭間で

浜尾四郎という推理小説家がいる。 推理小説家であると同時に犯罪小説家でもある。この二つは重なりやすいし、現に大抵の推理小説家は犯罪小説家である。この二つの違いは何か。推理と犯罪。推理小説は”謎”を解明する小説で、犯罪小説は”犯罪”を解剖する小説…

白痴という差別用語?

イディオッツ。酷評される一方絶賛されもする”映画”。 監督はラース・フォン・トリアー。 この作品はきりきりと胸が痛くなる。 あらすじ 本作は、すべてロケのみで行われ、カメラは手持ち、人工的な照明は禁止条件で撮影する“ドグマ95”という映画監督集団に…