狐が風鈴を鳴らす

本 映画 音楽 その他諸々の雑感を書き連ねるブログ

読書

第三帝国の興亡

introduction ナチスドイツは1933年からおよそ11年半存続し、ヒトラーは1945年4月30日に自害した。なぜヒトラーが権力を握るに至ったのか、そしてなぜヒトラー率いる第三帝国は滅びたのか。までを丹念に描いた本。 作者も戦争当時、ジャーナリストとしてドイ…

東西境界線『ボスニア物語』

introduction 村上春樹が今年もノーベル文学賞を逃した、と話題になっている。そうやって大きく取り上げれば取り上げるほど、受賞から遠ざかって行く気がするのはぼくだけだろうか。 今回読んだ本、ボスニア物語はノーベル文学賞を受賞している作家が書いた…

『暴力の人類史』①

面白いことが盛りだくさんな本だった。夢中で読んだ。 振り返るために自分でまとめてみたいと思う。 この本は現代は暴力が少ない時代である、ということを述べている。極めて冷静に客観的にそのことを述べているので首肯せざるを得ない。 数が減っているとい…

『犬の心臓・運命の卵』ワンワン・タマタマ

introduction 20世紀初頭のロシアは大変。とんでもないことが次々と起こり、次々と終わった。恐怖政治とかソ連崩壊とか世界大戦とか。とか、で済まされないことが多々起こった。 笑えない状況を憎々しく思っていた知識人の一人。ミハイル・ブルガーゴフは小…

今更『トム・ソーヤーの冒険』

introduction 世界で一番有名な子供といっても過言ではないのだろうトム・ソーヤー。少年文学の傑作!ですが、もしかしたら一番読んではいけない時に読んでしまったのではないだろうか? plot summary 茶目っ気たっぷりのわんぱく少年トムは、街の浮浪児宿…

『死の家の記録』人間観察記

introduction ドストエフスキーが実体験を元に書いた獄中記。監獄を”死の家”と呼ぶ……しかしあまりそうは感じなかった?いや、でもハッとさせられるのである。 plot summary 妻殺しの罪で服役していたゴリャンチコフの『死の家の情景集』という手記。 author …

『セヴァストーポリ』戦争

トルストイは軍人だったのは有名な話。その時の経験が作品にも活かされている。では、軍人として何をしていたのか。 その中で最も苛烈だったのがこの露土戦争末期クリミア戦争のセヴァストーポリだろう。この本はトルストイがまだ文壇に名を馳せていない頃、…

『聖ペテロの雪』きゅん

聖ペテロとは? イエス・キリストの最初の弟子とされ、キリストの弟子たちの中のリーダー的存在と目されていた。キリスト教は様々な諸派があり、それぞれに違いがある。その違いで戦争が起きたりしているのだが、この聖ペテロという人物はその諸派のいずれで…

『素晴らしいアメリカ野球』は宇宙一

原題がThe Great American Novel。直訳すると「偉大なアメリカの小説」だろう。そこを『素晴らしいアメリカ野球』と訳した人はすごい。 なにもかもが異常だから異常が異常だと思えないという小説。「偉大なアメリカ小説」という原題からはかけ離れてた無軌道…

『伯爵夫人』erectio

声に出して読みたい日本語。次々と繰り出される淫語は小気味よく笑いを誘う。伯爵夫人とは何者なのか。活動写真(映画)を揶揄しつつ小説の構造自体もその揶揄されている通りなのではないだろうか。 あらすじ おっぱいいっぱいおまんこいっぱい こんな笑劇だ…

『足摺岬』

寂しいのは自分をわかってもらえないし自分でもわからないから。理由は言葉にならずただ己の心の中で形を持たず、ふわふわとしている。 言葉にならない気持ちが涙になり慟哭になり、岬へと足を運ばせる。「死ぬ」ということは解放を意味するのだろうか?いや…

『美濃牛』(みのぎゅう)

どこかに置いていないかと探し続けて数年。もちろん古本屋にも行く。しかしどうしてもない。先日ついに取り寄せしようと思い問い合わせる、絶版とのこと。再版してると思ったが……意外です。 もう面倒になったのでネットの力を借りて手に入れた。 著者(殊能…

どこから『私の消滅』するか

中村文則はいつか読もうと思っていた作家。『私の消滅』が本屋の店頭に並んでいるのを見て「早いな」。文学界の六月号に掲載されたばかりだろう。予め決まってたんだろうな。パラパラと単行本をめくった。違いは巻末に参考文献についての一言と内容について…

『ロリータ』コンプレックス

スタンリー・キューブリック監督の『ロリータ』は原作者ナボコフが脚本を書いたもののその2割程度しか使っておらずナボコフも不満を漏らしていたという(書いた脚本がそのままだったら7時間にも及ぶってなったら仕方ない気もする)。十分いい映画だと思っ…

『重力の虹』HAHAHA!理解不能

わっけわかんねぇ。 ささやかではあるがそれなりに本を読んできた身としては、たいていの本は読めると思っていたけれど今回そのチンケな自負をぶっ壊していただきました。ありがとうございます。世の中は広いね。あらすじをかけるほどに読めず内容も理解でき…

『オービタル・クラウド』個人的な話

まず陳謝。「三冠達成と言いはするが其の実我が心胆を律動させること叶わぬだろう」続けて曰く「荒筋を読んでも引き込まれぬ。良いものは荒筋の時点で魅力的なもの」さらに曰く「宇宙が舞台、しかし月よりも遠くに行かぬさいえんすふぃくしょんに目新しいも…

『こころ』時代性

都合三度目か、この本を読むのは。中学生で1回高校生で1回そして今大学生で1回。その時その時で感想は違うけれど、今回で始めて「やるな……」と思った。(何様だ)うーん、自分の未熟さを思い知るばかり。特に高校生の頃はこの本(てわけでもないが)バカ…

『1984年』は何時?

『未来世紀ブラジル』を思い出した。それもそのはずでこの映画は1984年版『1984年』だとギリアム監督は言っていたそうだ。この出典はWikipediaだが信用していいだろう。それほどまでに根底にあるテーマ、扱い方はちよっと違うけど…は似通っていて全体は個に…

『スチームオペラ』 それはニッチ

スッチィィィィィムパァァアァァァァァンンンンンクゥゥゥゥゥゥ! あらすじ 蒸気機関を主な動力源とする大都会に暮らす少女エマは、空中船《極光号》の船長を迎えるため港への道を急いでいた。船内の一室で、ガラス張りの”繭“に封じられた少年を発見し、解…

『夏の夜の夢』間抜けたちの狂想曲 

愛すべき間抜け。間抜けかわいい。 あらすじ(夏の夜の夢) 妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ薬を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇。 アテネの王様シーシ…

『蒲団』もふもふ

蒲団という題名だけしか知らず、いつ頃の作家なのかも知らず。今回紐解けば日本の私小説の先駆けとも言える小説だったそうな。私小説というよりか自然主義の代表作として解説には書かれていた。 私小説は自然主義の大枠の中に入るのだろう。そもそも自然主義…

服は人なり!(カエアンの聖衣)

”服”からよくここまでの大法螺が吹けるのだろう。発想が普通じゃないよ。バリントン・J・ベイリーはすげえなと改めて思う。 あらすじ 服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対するザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。…

伽藍が白かったとき、とはどんな時代だったか

著者はル・コルビジュ。建築家。建築界では有名な人で建築やってる人で知らなかったらおそらくモグリでしょう。たぶんね。 建築家でありながら本も多数残している筆まめな人でもあります。「本を書くのは大嫌い」と本人は言っているらしいがそれでも本を書く…

わたしを離さないで

Never let me go=わたしを離さないで カズオ・イシグロの小説。わたしにしては珍しく、読んだ本 つまり”わたしをはなさないで”について他の人と話す機会があった。珍しいではなく初めてかもしれない。話の核心に触れていくので未読の方はご注意。 あらすじ …

『第三の魔弾』の完璧さ

勘違いしたまま読んだけどそれでも面白い。 レオ・ペルッツ『第三の魔弾』 あらすじ 神聖ローマ帝国を追放され、新大陸に渡った”ラインの暴れ伯爵”グルムバッハは、アステカ国王に味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッ…

悉皆屋康吉

舟橋聖一は風俗小説。そんなイメージ。 『芸者小夏』もそうだった。この『悉皆屋康吉』もそう。だけれどもそんなジャンル、そんな区分をされていようと関係ない。これはいい小説。好きだ。 あらすじ 呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者である悉皆屋…

クナウスゴール氏の歓迎会ーぼくは英語ができないので歓迎の意が示せないー

3月4日 ノルウェー大使館で開かれたクナウスゴール氏のイベントでは、終了後インフォーマルな歓迎会が開かれました。ささやかなもので、格式張ったものではないと。立食形式で、このイベント参加者はそのまま参加できるとのこと。 そんなもの一度も参加し…

徒然なるままに 「クナウスゴール語るー『わが闘争 父の死』、ノルウェー文学、そして世界」

2016.03.04 18:56 開始時刻寸前に目的地に到着。その割に席が埋りきっておらず、(隅っこは埋まっているが真ん中の方は人と隣あわせにならずに座れてしまう程度)一息ついていそいそと座る。オーロラホールという大仰な名前とは裏腹に、小ぶりのホール。しか…

ホワイト・ジャズ

暴力/腐敗/権力/政治/麻薬/密告/恐喝 言えることはひとつ。 エルロイはぶっ飛んでいる。 吐くのは保身のため、遠慮なく自らのために情報を売り流す。ここじゃあ誰彼だって俗に言う犯罪まがいのことはしているんだ。そんなところで我が身を大切にしなけ…

クロニクル・アラウンド・ザ・クロック

小説で音楽を扱うことは難しい。音は文字に置き換えることはできない。音楽をメインに据えるということはそれだけで水の中で息をしようとするようなものだろう。 『クロニクル・アラウンド・ザ・クロック』略してクロクロ。 あらすじ 幼稚で痛々しいわたしの…

アメリカ大陸のナチ文学

帯の背中に書いてある文句が「悪の輝きを放つ作家たち」。 悪の輝き、とはどんなものか。黒い光、それとも悪の意志を秘めて光ることか。輝くというより光を携えると言った方がいいのか。一体悪の輝きとは? あらすじ……といってもあらすじというあらすじがな…

フェルマータァァァァァァァァァァァァ!!!!!

指を鳴らしてみたり、メガネを指でクイッと押し上げたり、独自性を出し信号が赤になる瞬間に横断歩道を渡りきったり、足で5拍子のリズムをとってみたり、レシートを受け取るさいに絶対に小銭を重しに使わせないように努力してみたり。 ああ、ぼくもフェルマ…

グレン・グールドは語る、が何を言っているかぼくにはさっぱり

1974年8月15日発行のものと、次の8月29日、二号に渡ってローリング・ストーン誌に掲載されたグレン・グールドへのロングインタビュー記事に、補填や資料を加えた本。 グレン・グールドが自らの音楽、思想や理念をつまびらかに語るのですが……。 グレン・グー…

ワルシャワ・ゲットー

第二次世界大戦時、最大の受難者はユダヤ人だった。 彼らは排斥され、隔離され、処理された。ユダヤ人は人ではなく、羽虫のようにあっけなく命を散らしていった。奴隷以下の扱いを受け、そこを歩いていたから、という理由で殺されることはおかしくもなんとも…

深夜の人 結婚者の手記

日記や手紙、詩歌、随筆など集めて編纂した本。 素直で実直、だというのがぼくの室生犀星への印象。 彼の作品にでてくる人たちは、生きているというか鮮度が高いというか。自らの感情にいちいち理屈をつけたりしないところが好きだ。それにこの作品集は随筆…

正義と法の狭間で

浜尾四郎という推理小説家がいる。 推理小説家であると同時に犯罪小説家でもある。この二つは重なりやすいし、現に大抵の推理小説家は犯罪小説家である。この二つの違いは何か。推理と犯罪。推理小説は”謎”を解明する小説で、犯罪小説は”犯罪”を解剖する小説…

バレエ・メカニック

あらすじ 造形家である木根原の娘・理沙は、九年前に海辺で溺れてから深昏睡状態にある。「五番めは?」―彼を追いかけてくる幻聴と、モーツァルトの楽曲。高速道路ではありえない津波に遭遇し、各所で七本肢の巨大蜘蛛が目撃されているとも知る。担当医師の龍…

また会う日まで

「トランクスとブラには、見覚えはあるけど」 「こいつも悲しいんでしょう」 「辞めて惜しい仕事じゃない」 「おれには息子がいる!」 一年が終わる。 今年読んだ本の中で、心を打った本は数多くあるが、その中でもとびきりなもの、ほのかに発光する、本の感…

りら荘事件

推理小説を最近読んでいないことに気がついた。じゃあ久しぶりに何か読んでみようと思って手に取ったのは鮎川哲也の”りら荘事件”。一気呵成に読みきりたかったから、時間が空くのを待っていたら読み始めるのに買ってから少し時間が空いてしまった。読み始め…

ハーモニー

ユートピアであり、ディストピア 個を差し出して、得られた代替物は平穏と健康 「自分のカラダが、奴らの言葉に置き換えられていくなんて、そんなことに我慢できる……」 「わたしは、まっぴらよ」*1 ぼくにSFとは、を教えてくれた本。といってもSFにも多種多…

ルバイヤート

九重の空の広がりは虚無だ! 地の上の形もすべて虚無だ! たのしもうよ、生滅の宿にいる身だ、 ああ、一瞬のこの命とて虚無だ!*1 十一世紀ペルシアの詩人、オマル・ハイヤームは短い四行詩(ルバーイイ)で人生を歌い上げた。抒情的に簡潔に。難しいことは…

零式戦闘機

零式戦闘機、通称ゼロ戦。 その機体は日本の誇りと意地の結晶だった。 優れた性能を持ち第二次世界大戦で活躍した機体。 しかし次第に大国が迫ってくる。追い詰められる日本。 そして… ぼくにこの本を勧めてくれた人はこの本を絶賛していた。同時に”風立ちぬ…

もしもし

この本を読むときに気をつけること 1つ 他人の目が届かないところ、なるべく自室で読むこと 1つ 近くにティシュもしくはタオルと用意しておくこと 1つ バカになること、見栄や体裁は捨てること、思いきり笑うこと。(このためにも1人でいる時に読むがよ…

ケルベロス第五の首

綿菓子みたい。 曖昧模糊。捉えどころがない。なのにべたつく。 読み終わったはずなのに、読み終わった気がしない。 確かに最後の一語まで読んだ。読んだはずなのに。 ケルベロス第五の首 (未来の文学) 作者: ジーン・ウルフ,柳下毅一郎 出版社/メーカー: 国…

METAL GEAR

メタルギアソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット ゲームのノベライズは読んだ経験もないし、興味もない。ゲームそのものをやればいいと思うし、ゲームでしかわからないことが山ほどある。わざわざ小説にしたものを読む必要はない、ゲームをやれば済む話、と…

戦争と平和 

名前は誰もが知っている。 しかしその中身、その極厚の本の内容となると、皆ぼんやりとしか把握していないのではないだろうか。だってめちゃめちゃ長いし、めちゃめちゃ疲れるし、これを最後まで読み通す気力を持ち続けるのは困難ではないか。 題名は強烈、…

いざ、「屍者の帝国」へゆかんとす

我々が死者に安らかであれ、と願うのは何故だろか。 それは死者が往々にして安らかではないからだ。 と著者のひとり伊藤計劃は色々なところで言っている。伊藤さんの最後の作品となってしまったこの作品。 プロローグは死者が、この話では屍者と呼称される、…

Mって何さ

下手な官能小説よりエロティックじゃないんですかコレ(官能小説読んだことありませんが)と毛皮を着たヴィーナスを読んで思います。 何でもマゾヒズムの語源はこの著者のレーオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホから性科学者、初めて聞いたぜこんな科学分…

女たちよ!

言っておくけれどぼくが女性に対して含むところは、今のところない。「女たちよ!」というのはそういう題名の本です。とても面白いです。 映画俳優であり、デザイナーであり、エッセイストであり、映画監督でもあり、翻訳もし料理も上手。そんな伊丹十三が著…