常々感想記

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リズと青い鳥

 

TVアニメは見てたけれど見に行く数日前までこの映画は知らなかった。だから期待しすぎることもなくフラットな気持ちで見に行けた。だから見たときにすごく驚いた。これがアニメ…アニメなのかーって。

TVアニメが劇場化したとか、作ったのが京アニとか、原作がありますとかそこらへんはどうでもよくて(どうでもは言い過ぎかもしれない)ただ、いい映画を見たという気持ちが残った。

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鎧塚みぞれと傘木希美、2人の少女の話をここまで徹底的にやり尽くすのか。すごく簡単に要約してしまうと「互いにかけがえのない存在のみぞれと希美が少し自立して成長する話」で終わる。2人だけの輪がほつれて、こんがらがって、それを縒って、また別の形の輪にする話。話のタネとしては珍しいものではないし、突飛なことをしているわけでもない。それが90分。

 

冒頭の歩いているシーン。歩き方が違うみぞれと希美。編集と劇伴の技が冴え渡る。何をおいてもこの2人に焦点を当てると言う強い決意。みぞれは希美への依存し、希美はみぞれと比べると軽くて薄い、真剣味がない。話し方、歩き方、カバンの持ち方に、視線の向け方、構図、編集、音楽、あらゆる手段を用いて丁寧に2人の内面を描こうとする。全てにこの2人を描き切るというしっかりとした意志を感じた。

 

内面を描写するのにてっとり早いのは語らせることだけど、そんなことはできない。だから描く。この映画はアニメなので【描く】といったらその通りで、1枚1枚描くしかない。1カットの情報量が多くて密度が高い。描いたものしか、意図したものしか画面に映らないのがアニメと言うことを念頭に置くと、どこまで描くんだ、とこちらが及び腰になる程。あほじゃん?と言いたい。 

 

弱いと感じたところは題名にもなっている劇中作の「リズと青い鳥」。この劇中作の結末は早い段階でわかる。つまりこの映画も2人が違う道を歩むことは早々にわかる。すると鍵はどっちがリズでどっちが青い鳥なのかになって、結末近くで互いに気づく訳だけどこれは言い切れるものじゃない気がする。リズの部分もあるし、青い鳥の部分もある。まして2人の心情を丁寧に描いてる分、言い切ってしまうのは少しもやもやしてしまった。

だけど映画として成立させるためには物語として何かしらの着地点がなくちゃいけない。その着地点を用意するためにはこの「リズと青い鳥」という劇中作の力を借りるしかなかったのかなぁ。 

 

そんなことを言いながらも「リズと青い鳥」パートも見ていて楽しかった。絵本が動いているかのようなアニメーションに度肝を抜かれて歯噛みした。こんな映画を作ったことは尊敬したいけどすごく悔しい…ごちゃごちゃいったけれど要するに面白かった。

 

 

 

 

1番悶えたのは、オーボエを咥える前にちょびっと舌をだしたみぞれでした。