常々感想記

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さよならの朝に約束の花をかざろう

 

さよならの朝に約束の花をかざろう」略して「さよあさ」見てきました。良かったです。ただ感想を書くだけだと面白みがなくなりそうなんで以下、1人2役の対談形式で映画の感想を書きます。ネタバレ多々あります。まだ見てない人は見た後に読んでください。

(アホくさいですがこーういうのに憧れがあるんです・・・)

 

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J:本日はよろしくお願いします。Bさん。

B:よろしくお願いします。バシバシ語っていきます!

J:早速で恐縮ですが、「さよならの朝に約束の花をかざろう」拝見していかがでしたか?

B:面白かったです。驚きがなかったのが少し残念でしたけれど・・・

J:ほー、ではまず面白かったところからお伺いしましょう。具体的にどう面白かったですか?

B:どこか見たような世界で堂々とファンタジーをやってくれたことです!

J:どこかで見たような、ですか?

B:はい、こんな中世西洋風の純ファンタジーって久しくなかったと思うんです。最近のファンタジーってあったとしても異世界転生とか、魔法と剣で争い蔓延る戦乱の世とかそんなんばっかです。そんな中、派手さはないけれど、どこかで見たような気もするけれど行って見たい!と思わせてくれるファンタジーの世界で物語を作ってくれた。それだけで涙がちょちょ切れそうです。

J:逆に言えば目新しさはなかったということですよね?それって褒めているように聞こえませんけど・・・

B:目新しさなんてどうでもいい!純ファンタジーってみんな好きだから!

J:それって異世界転生でもいいんじゃ?

B:ステータスが数字で表示されて主人公がやたら無敵でかわいい女の子がいっぱいのハーレムを築く話がファンタジーであるのもか!俺は認めないぞ!

J:・・・

B:あれは妄想だ!

J:ファンタジーの世界観がよかったとおっしゃいました。具体的にどの点が良かったですか?

B:まず、キャラデザがいいですよね!キャラ原案の吉田明彦さん大好きなんです。それに加えてこの「さよあさ」という物語に吉田さんのキャラがハマってました。

J:吉田明彦さんと言えばやっぱりFFが有名だと思います。

B:吉田さんの絵ってちょっと西洋っぽいですよね。線が主役でなく、あくまで色が塗られてひときわ輝くというか。もちろん線画の時点でも魅力抜群でたまらないんですが、ヌリヌリしたら一層すごい。目が小さくてぱっちりしているのも大好き。

J:あの吉田さんの絵を動かすのは大変そうですが

B:キャラデザの石井百合子さんがすごいんだろうなぁと思わされました。正直キャラデザって難しんだろうな、くらいのことしかわからないんですが、アニメで動かすとなると線の取捨選択絶対大変ですよ!

J:そのキャラデザが「さよあさ」という映画で重要だったと

B:ファンタジーってやっぱりおとぎ話であってほしい、夢を見られなきゃファンタジーじゃないって思うんです。みんな夢を見させてくれました・・・

 

J:物語自体はいかがでしたか?イオルフという年を取らない種族、そのイオルフの少女マキアが人間の子供を育てるというあらすじです。

B:語り口のテンポが良かったです。ほぼ1世紀を2時間に納めて、綺麗にまとまっていたので時間を意識せず見れました。それに日常風景の描写がきちんと描かれていてマキアってこんな子なんだ、と見て伝わってきました

B:確かにあの「おっぱいがでないんですぅ〜〜」に始まる、日々の雑事は描かれていたように思います。

J:あのシーンは好きなシーンの1つです!あれはいい

J:マキアという少女については?どこかひとりぼっちな雰囲気を漂わせつつ襲撃から運良く逃げだせた後エリアルと出会ってからはお母さんになろうと必死に努力しています

B:エリアルと幼少期をすごした農場のシーンではたどたどしくて頼りないです。でも頑張ろうと努力している、そこが健気でかわいいし応援したくなる。ちょっと後、マキアが酒場で働いているところに差し掛かるとしっかりしてきていて、育児を通して身の回りのことがこなせるようになったんだ、成長したね〜とよしよししたいくらい。マキアを嫌いになる人はいないんじゃないかなぁ。

J:マキアはかわいいとおっしゃいました。レイリアはかわいいですか?

B:このお話を見た限りではマキアに軍配が上がります!レイリアはおっかねーです。あの表情は怖い。浮気したら刺されそう

J:浮気しないでください

B:レイリアってもともと強い子だと思うんです。だからあんな扱いを受けても耐えることができるし、逃げ出すチャンスがあっても王宮に留まることをみずから選んだ。身重になっていたというのもあると思いますが・・・

J:マキア、レイリアと幼馴染の中で最後の1人がクリムです。クリムはだんだんとレイリアを助ける、という考えに取り憑かれてしまいます。

B:挫折を幼少期に知らないとああなるんですよっ。イケメンな上、かわいい幼馴染とイチャイチャしてた罰です。

J:それはかわいそうすぎる言い草。彼、最後報われませんよ?

B:マキアに子供いなかったら言い寄ったに違いないと思っているので。

J:彼を低く見積もりすぎでは?

B:「こどもがいるから置いていく」って言ってるんですよ?逆に言えば「こどもがいないなら連れていく」ってことです。やつはいつまでも過去に囚われている男です。下手に行動力がある分厄介です。

J:では彼が一番嫌いだと?

B:一番きらいなのはあの王国のとりすました顔してる騎士、イゾルってやろうです。あいつはどーしようもないですね。それに比べたらクリムは同情できるのでましです。

J:言いますね。ちなみに理由は?

B:レイリアのことを哀れんで、心痛めているようなツラをしているにも関わらず結局何もしない朴念仁だからです。ただの宝石投げあて機ですよ。上の命令を下に流すことしかできないやつです。くそ王様&王子を最後ぶん殴るくらいしてくれたらまだしも

J:彼はただの軍人ですよ・・・無理言い過ぎです。ところでここまでエリアルの話はあまりしていませんね。彼はマキアにとってかけがえのない存在です

B:エリアルは正直マキアほど入り込めませんでした。だから取り立てて話せるようなことは何も・・・純粋な子供のままでいれば良かったのに・・・

J:それができないってことがこの映画の根幹ですよね!?アホなこと言わない!はい、エリアルが母親のマキアに向けている感情が親子愛でないと気づき、2人は別離に至るようになりました。

B:この「さよあさ」はマキアの話だと思うんです。だからエリアルは彼女にとって大事な存在ですが、あくまでも彼女が愛を知るための存在としか思えなかったなぁ。特に別れた後はなおさらでした

J:なるほど

B:でも、マキアとエリアル姉弟として暮らしていたあのシークエンスは好きです。あの部屋の感じとか、特に床にランプが落ちて燃えるシーン、エリアルがもう気持ちを抑えきれなくなったあの一瞬はエリアルに「マキアかわいいもんな。しょうがないよ」と言いたくなりました。

 

J:ここまで「さよあさ」について語ってきましたが、意地悪な質問を。この「さよあさ」でダメだと思ったところはありますか?

B:ダメというわけではないけど、あまり驚きはなかったです。話の流れが読めちゃう。

J:ほほーマキアが王宮にさらわれてしまうのでは?と思わなかったと?

B:思いました。でも、嫌な考え方ですがあそこでマキアが王宮にさらわれたらどう話を展開させるのか予想が付かなすぎて逆にないんだろうなぁと思っちゃいました。それこそ王宮内でマキアとレイリアの後宮争いが始まっちゃう。

B:ドロドロした話になりそうです。

J:それに誘拐するとしたらあのクソイゾルがやるってことですよ。それは許さん!絶対にだ!

B:イゾルが本当に嫌いなんだってことはわかりました。

J:加えて一個だけ納得できないところが

B:なんですか?

J:レイリアとメドベルってどうして会えないんですか?

B:王様の命令じゃないんですか?

J:そんなこと言ってましたっけ

B:自信はないです

J:イオルフの形質を受け継いでいないなら2人を会わせても問題じゃないと思うんですが・・・受け継いでいても問題だと思いませんが。意味もなくレイリアのことをみんな避けすぎな気がして。物語の都合上レイリアを追い詰めるために、実の子に会わせないようにしたとしか思えなかった。

B:さっき浮気したら殺されそうみたいに言ってたのに?

J: だからこそ王子はレイリアを避けたんですかね?

 

J:ちょっと話をここで変えましょうか。この作品、脚本家として有名な岡田麿里さんの初監督作品でした。

B:岡田麿里さんが手がけた作品で一番いいと思います。

J:おお〜「あの花」や「ここさけ」よりもいいと?

B:そう思います

J:私は一番と言い切れるほど良かったと思えないんですが・・・どういった点が1番と言い切れる根拠なんでしょう?

B:岡田麿里さんってそれやる?っていう生々しいことぶち込んでくるじゃないですか。

J:まぁ、はい。ドロドロした見たくない聴きたくないことを言わせるしやらせますね。それが魅力でもあります。

B:これもさっきいったことと重なるんですがそういう生臭いものはファンタジーと結構相性いいと思うんです。

J:よく知れば残酷なお話は確かにファンタジーにあります。下手なミステリーより人が死んでることも多いですね。

B:そういった親和性というか、マッチのし具合が今回「さよあさ」ではいい方向に出たと思います。今までの作品って「なーんでこんなこと言わせるの」という作為的なものがどうしても感じられちゃうことがあったんですが「さよあさ」ではあまりありませんした。

J:ファンタジーだからこそ今回はうまくいったと。再三ファンタジーについてお話していますが、ある意味「さよあさ」はファンタジーが終わってしまうお話でもありますよね?

B:うーん、あれはファンタジーが終わるというかイオルフやレナトって太古の時代から存在している種族ですよね。それが変わることなく、他者と関わりを持つことないまま年を重ねると時代に取り残されるっていう感じでした。だからイオルフは滅びないと思います。

J:夢ありますね!

B:あんな可愛くて綺麗な種族が滅びてたまるものか!

 

J:ここまで長々とありがとうございました。最後にこのシーンが一番好き!というのをあげていただけますか?

B:一番ですか。うーん、2つ選んでいいですか?

J:もちろんです。どうぞ

B:一つは成長したラングとマキアが酒場で再会するシーン。

J:ラングは好青年になってました。この映画の良心でもあります。

B:ラングは成長しているのにマキアって本当に見た目変わらないんだなぁと思わされました。あと自分が酒場のシーンが好きなんで。むさ苦しい上熱気に溢れていて何かが起こる前兆ビンビン感じます。

J:もう1つはどこですか?

B:最後、マキアがエリアルを看取った後泣くシーンです!

J:ベタですね〜いいですねー

B:ようやっと泣いた!と思いました。泣き方もよくて、最後にきっちり山場を持ってきたことに拍手を送りたい!あと泣いているマキアかわいい!

J:またそれですか。もうげんなりですよ。

B:いや、マキアは最初はこっちが頭撫でてあげたいな〜って感じなんですが、最後はこっちが頭撫でて欲しいなぁ〜ってくらいに母性溢れてすごいですよ。かわいいし。その後馬車で去っていくのもベタベタで最高です。

 

J:そろそろ終わりにしたいと思うんですが言い残したことはありますか?

B:ワンコを埋めるシーンも好きだなぁ。

J:はい、長々とありがとうございました!次回もよろしくお願いします。

B:もう一回やる気力が出たら

J:次回はアカデミー賞、作品賞、監督賞等を取った話題作「シェイプ・オブ・ウォーター」もしくは見た人みんなバーフバリ!と叫びたくなる「バーフバリ・王の凱旋」の予定です。

B:両方とも面白い映画でした。