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狐が風鈴を鳴らす

本 映画 音楽 その他諸々の雑感を書き連ねるブログ

『暴力の人類史』①

読書 感想

面白いことが盛りだくさんな本だった。夢中で読んだ。

振り返るために自分でまとめてみたいと思う。

この本は現代は暴力が少ない時代である、ということを述べている。極めて冷静に客観的にそのことを述べているので首肯せざるを得ない。

数が減っているということをデータで示し、その理由を探る。一体どうして暴力は減ったのか?心理学的要素から、また脳科学から。

ボリュームたっぷり上下巻で1000ページ以上。

 

暴力の研究になぜ取り組んでいるのか?人間の本性を研究するものにとって、暴力は当然の関心ごとであるからだ。                by著者

著者はハーバード大学心理学教授で他にも数多くの著書があるようだ。

 

第1章 異国

 

過去は異国である。あちらでは物事のやり方が違うのだ。

                                                                L.P.ハートリー

この言葉から始まる1章では古代から現代に至るまで、暴力の概観を示す。どんなことが起きていたか?またどんな理由からなのか?

 

まず著者は「暴力が減っていると言ってもほとんどの人は信じないだろう、信じようとしないだろう」と述べる。信じられなくても事実そうだ、ということを納得させるために多くのデータ、史料を今後用いていく前準備をする。

 

そのために古代から現代までの暴力についての概観に触れる。

 

まずエッツィというおよそ5000年前の人(?)に触れる。氷の中で発見された死体には切り傷や血が付着していた。また他にも発見されたケネウィックマンという、およそ9400年前の人の骨盤に石の槍先が刺さっていた。

 

ホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』は当時の文化を反映していると考えられる。文字化されたのか紀元前800~650年だとされているその中には数々の暴力の描写がある。

根絶やし、略奪、奴隷化。男たちは殺され、女たちは性労働や肉体労働に。古代の武器でも十分に人を殺傷できる。よって近代のハイテク兵器と比べるのは意味をなさない。大量殺人とレイプの物語。

旧約聖書を読んでみよう。驚くほどの残虐さを提示している。

 

ローマ帝国で死の手段でポピュラー(とんでもない言い方)だったのは磔刑

本書から少々抜粋

ローマの磔刑はまず裸にした受刑者を鞭打つところから始まる。使われたのは先の尖った石を編み込んだ短い革の鞭で   中略  「裂傷は骨格筋にまで達し、血を流して痙攣する細い筋肉の束が剥き出しになる」。次に両腕が重さ四五キロほどもある十字架にくくりつけられ、男はそれを背負って支柱が立てられた場所に運んでいかなければならない。そこで彼は背中をずたずたに裂かれた体を起こされ、手首に釘を打ち込まれて十字架に磔にされる。  中略  両腕に全体重がかかり、肋骨はその重みで広げられるため、腕に力を入れるか、釘に打たれた両足を踏ん張るかしない限り呼吸は難しくなる。三、四時間から長がければ三、四日間苦しみぬいた末に、男は窒息か失血のために死亡する。

凄まじい。このような残虐行為が許容されていたのがローマであった。

 

中世で騎士といえばロマンチックなイメージが喚起される。しかし実情はそうではない。アーサー王伝説をめぐる物語の中で最も有名な『ランスロット』に過激な暴力シーンがどのくらい出てくるか調べた研究家がおり、それによると平均して四ページに一回の割合。

頭蓋骨が割られ、巨大な蹄で踏み潰され、首がはねられ、肩から下を切り落とされ、手が切り落とされ……等々まだまだ続く。

 

近代初期のヨーロッパ。

 

国史を教えるのにこんな歌がよく使われるそう。

 

ヘンリー八世、めとった妻は全部で六人

一人は死に、一人は生きて、二人は離婚、二人は首をはねられた

 

でっち上げた罪で死刑に処し、他の女が好きになったから死刑に処す。好きになった女のかつての男のはらわたを四つ裂きにする。

 

またブラディー・メアリーの異名を持つメアリー一世はプロテスタント信者およそ300人を火炙りに。いくら書いても書き足りないほどにそのような事件が頻発している。

 

上記に書いた事柄はほんの一片にすぎない。近代以降も暴力行為は現代の基準から見れば度外れており、見ていられない。

 

次章以降でその内容にもっと踏み込み、歴史的研究や統計データの助けを借りて暴力は確かに減っている、ということを述べている。

面白い内容がてんこ盛りで目から鱗が飛び出した。次章以降もまとめたいと思う、がまとめるのも大変そうだ。

 

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上