常々感想記

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服は人なり!(カエアンの聖衣)

 ”服”からよくここまでの大法螺が吹けるのだろう。発想が普通じゃないよ。バリントン・J・ベイリーはすげえなと改めて思う。

あらすじ

服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対するザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。衣装を満載したカエアンの宇宙船が難破したという情報をつかんだザイオードの密貿易業者の一団はその奪取に向かう。しかし、かれらが回収した衣装には、想像を超える能力を秘めたスーツが含まれていた……

唯一無二の服SFである。服が主役。過言ではなく。服を着る人はいるけれどその人より服。何より服!

この小説の肝っ玉はそのアイディアだ。どうして?というような得体の知れないものがポンポン飛び出してくる。それだけで一つの小説が書けるのではないかという創造力。しかもそれを惜しみなく投入するその気概。もうねー大口開けて惚けてしまう。

アイディア勝負の面もあるSFというジャンル。いやもうすげーわ。個性的すぎる発想で誰にも真似できないよ。SFというジャンルの中にベイリー枠ができるね。ベイリーに影響された枠。アイディアの一つ一つが楽しいことといったらこりゃもうたまらん。アイディアが素晴らしい分か登場人物はクソ野郎を取り揃えており、そのクソっぷりにもかかわらずクソっぷりを感じさせない語り口。クソのはずだが、クソの部分以外もきちんと書いているからか?知的ですらある。知的でなかったらこんなアイディア浮かばねーよな。

服装はその人の個性を表す、から服自体が個性を持つという飛躍。服が個性を持ってどうするの?それは……。

結末に関してある一人の人物(宇宙服とも言える)←この注釈意味わからないだろうけどそういう小説なのだ  が大きな役割を果たすのだが、なんだか切ない。

アイディア勝負の小説だからあまり中身に触れずに感想を書くが、核をなしているのはアイディアでも、それだけでもないことは確かで一歩間違えたら収拾がつかないこの話にきちんとした結末があることからもそれはわかるだろう。

ああ、ハエだらけの星には絶対行きたくない。あたり一面黒いとおもったらそれが全部ハエなんだってよ。気持ち悪っ!なんで服の話のはずなのにハエだらけの星が出てくるんだよ?と思ったそこのあなた、その通り。なんで?がいっぱいな小説なんです。

ベイリーすげー。ただし人を選ぶ。

 それにしても新訳版がでてよかったよかった。これで簡単に手に入るようになった。今までずっと読みたかったけど手に入らなかったのだ。