METAL GEAR
ゲームのノベライズは読んだ経験もないし、興味もない。ゲームそのものをやればいいと思うし、ゲームでしかわからないことが山ほどある。わざわざ小説にしたものを読む必要はない、ゲームをやれば済む話、と思っている。その考えは変わらない。
けれど、これは読みたいと思った。読みたくないとも思った。
その理由も表裏、一枚層を隔てただけで、相掛かる。
伊藤計劃の作品だから読みたいし、読みたくない。これを読んでしまったら、もう手に入る限りではすべての文章を読んだことになる。それは寂しい。
メタルギアなんて全く知らない。知人の家で大乱闘Xをやった時、スネークを使ったことがあるくらい。それでも読もうと思ったのはやはり伊藤計劃という作家に心惹かれるからだろう。
面白い。
この本はメタルギアソリッド4のノベライズだそうだが、ぼくみたいに全く知らない人でも充分理解でき、楽しめる。スネークとは一体何者なのか。一体何のためにスネークは戦っているのか。そしてスネークだけでなく、周りの人物や取り巻く世界。ロジックを一つ一つ積み重ね、生まれた世界。その世界の発起は一つの願いであった。
メタルギアのゲームをやりたくなってしまったぜ。メタルギア4だけじゃなく、他の作品にも触れている関係上フレッシュ!できたて新鮮!に楽しめるとは言えないかもしれないけどね!
全ての武器がIDで管理されている。ID認証されない限り、銃を打つことはできない。傭兵派遣会社。戦争の代理人。代理人同士の戦争。当事者不在の戦争。経済の為の戦争。
争い、人の命を奪うことで世界は動いている。感情はナノマシンによって管理されている。兵士として不要なものは切り捨て、最適化する。
心そそる設定、ガジェットの数々。とくに強化外骨格とか、白い血に、メタルギアREX(核搭載2足歩行戦車)、オクトカム実装車両(光学迷彩実装車両)、パワードスーツ、凄いワクワクする。ワクワクが止まらん。男心を揺さぶる。
潤滑油でぬるぬるしている金属製品を想像すると火照ってくるよー。ワオ!
伊藤さん自身も影響受けてるのがこれまでの作品を読んでいてわかる。伊藤さんが敬愛したメタルギアはその作品にも影響を与えているのだ。
どうやらぼくは外的要因のせいで、人生を歪められた人物が好きらしい。どこかペーソスが漂うような。そう、雷電である。生まれながらに背負う宿業ではなく、生まれたのちに背負わなければならなくなった理不尽な宿痾。それは全て自分のせいではないが、自分がしたことでもある。自分がしたことは自分にも責任がある。
それをどう清算し、生きてゆくか。
こういう造形のキャラクターって結構死んじゃうんだよね。今までもコイツいいなぁと思うと死んじゃうということが多々あった。最近ではもう、ぼくが好きになったらいつか死ぬことを念頭に置くほどに。
さて雷電はどうなるのでしょう、か。雷電いいキャラクターしてるよぉ。
強化外骨格に白い人工血液。少年兵だった過去を持ち、刀をブンブンふりまわして戦うその姿。ゲームで見たい。
もう一人好きな人物を上げると、ナオミ。彼女も上記のような、けれど少し違う背景を負っている。雷電とは違う、別種の業。さて彼女もどうなるのでしょうか。
そして物語は彼らの罪を潅ぐために進んでいく。いや、違う。罪をなかったことにしたいわけじゃない。罪は背負い、墓まで持っていく。これはもはや義務。義務を成し遂げるために彼らは歩む。
メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/03/25
- メディア: 文庫
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