女たちよ!
言っておくけれどぼくが女性に対して含むところは、今のところない。「女たちよ!」というのはそういう題名の本です。とても面白いです。
映画俳優であり、デザイナーであり、エッセイストであり、映画監督でもあり、翻訳もし料理も上手。そんな伊丹十三が著者。
知ったふうなこと書いているけれどこの本読むまで知りませんでした。凄い人だったんだなぁーと著者紹介を読んで思う。中身を読み進めていくとたまりません。確立した自分の視点からばっさばっさと一言申す。厳密にいえば一言申しているわけではなく、これはこういうものです、断言しているだけで読者に講釈垂れたりはしていない。だけども―引用した方が早いね。どーぞ味わってください。
最初のコラム、スパゲティのおいしい召し上がり方、から一部分抜粋。
さて、ここでちょっと日本の洋食屋のスパゲティに思いをいたしていただきたい。茹ですぎたスパゲティの水を切って、フライパンに入れ、いろんな具を入れてトマト・ケチャップで炒める。しかも運ばれてきたときにはすでに冷え始めていて湯気も立たぬ。
これをあなたはスパゲティと呼ぶ勇気があるのか。ある、というなら私はもうあなたとは口をききたくない。
大笑いした。この言い方。ぼくもイタリア料理店でバイトしたことがあるからわかるのだけれどもスパゲティはスピードが肝なんですねー。茹であがったらその五分後には間違いなく提供しなくてはいけない。五分でも長いかも。三分?
スパゲティは家庭料理なわけで、手間をかけて作るもんじゃないってこの人は言ってる。それは本場での話で、日本では上記のような作りかたをしてもレストランで提供されるものとして充分成ってるのだけれど、そんなもの本物じゃないやい、と。
女のことから車のことまで。
終始こんな調子です。本物志向です。サラダのドレッシングは作り置きなんかするもんじゃない、とか、洋服ってものは日本人には似合わないから馬鹿に服に凝ってるのは阿呆だ、とか。言い繕うことはなく、ズバッと言い切ります。
あらゆる範囲にわたって書かれているエッセイ集。自分の見聞も少し広まった気がする。でもこういうエッセイを読むときに気をつけたいのはしっかり自分の意見を持つこと、簡単に流されないことであります。それこそ雲のようにふわふわーっと著者の言うことを鵜呑みにしたらこれは全く持って読む意味がないです。多少固持するぐらいで読み進めた方がいい。で、自分の意見と違っていたら、もっとしっかり読んで、納得したら同意すればいいし、違うと思ったらそれはそれでいい。特にこの「女たちよ!」はかーなーり感化されやすいと思う。読んだ翌日から早速マヨネーズを自作し始めたりしないように。感化されることが悪いんじゃなくてそれが熟考の上でならいいのだけれど。
書いてあることが全部正しいわけではない。当たり前だけどこれ大切。
それにしても面白いです。この人の本、全部読もうと思う。今日は「ヨーロッパ退屈日記」買ってきました。映画も見ます。
ぼかぁ好きなぁ。でも気障野郎だと思う人もいるだろうなぁ、と読後最初感じたこと。
伊丹十三恐るべし。
なんでも亡くなった時も謎が多かったようで・・・
大変なひとだったんですね。