狐が風鈴を鳴らす

本 映画 音楽 その他諸々の雑感を書き連ねるブログ

感想

茄子の輝き

同じ記憶を様々な事柄でなんども反芻する。その時、過去もしくは現在どっちにいるのだろう。見ることのできない四次元軸はねじれて跳ぶ。 些細なこと、毎日の中よく触れること。これも誰かにとって一生残るような記憶になるかもしれない。人の頭の中を覗いて…

ムーンライト

introduction アカデミー賞を作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門で受賞したのが『ムーンライト』だ。今回、あらすじやPVでの知見は無しでの鑑賞。知っていたのは黒人の少年の話だ、というくらい。 結論から言うとこの映画が大好きです。 plot summary リトル…

第三帝国の興亡

introduction ナチスドイツは1933年からおよそ11年半存続し、ヒトラーは1945年4月30日に自害した。なぜヒトラーが権力を握るに至ったのか、そしてなぜヒトラー率いる第三帝国は滅びたのか。までを丹念に描いた本。 作者も戦争当時、ジャーナリストとしてドイ…

2016東京国際映画祭にて。ごめんなさい。

introduction 行けるなら行こうと思ってなんだかんだ3年目。『雨月物語』や『荒野の決闘』 等古い作品のリバイバル上映も魅力的でした。めちゃみたかった。 しかしやはり“今”の映画を見たいと思って見たのが『シエラネバダ』。 なんでだろう?前年の『カラ…

『エル・トポ』

introduction カルト映画として有名なこの映画をようやく見ました。 まぁぁぁぁぁ鮮烈でした。映画、というより活動写真、と言った方が雰囲気はつかめると思います。なんせ監督自ら、これは芸術映画と言っているくらいですから。いやいや、確かにとんでもな…

東西境界線『ボスニア物語』

introduction 村上春樹が今年もノーベル文学賞を逃した、と話題になっている。そうやって大きく取り上げれば取り上げるほど、受賞から遠ざかって行く気がするのはぼくだけだろうか。 今回読んだ本、ボスニア物語はノーベル文学賞を受賞している作家が書いた…

『暴力の人類史』①

面白いことが盛りだくさんな本だった。夢中で読んだ。 振り返るために自分でまとめてみたいと思う。 この本は現代は暴力が少ない時代である、ということを述べている。極めて冷静に客観的にそのことを述べているので首肯せざるを得ない。 数が減っているとい…

『犬の心臓・運命の卵』ワンワン・タマタマ

introduction 20世紀初頭のロシアは大変。とんでもないことが次々と起こり、次々と終わった。恐怖政治とかソ連崩壊とか世界大戦とか。とか、で済まされないことが多々起こった。 笑えない状況を憎々しく思っていた知識人の一人。ミハイル・ブルガーゴフは小…

今更『トム・ソーヤーの冒険』

introduction 世界で一番有名な子供といっても過言ではないのだろうトム・ソーヤー。少年文学の傑作!ですが、もしかしたら一番読んではいけない時に読んでしまったのではないだろうか? plot summary 茶目っ気たっぷりのわんぱく少年トムは、街の浮浪児宿…

『死の家の記録』人間観察記

introduction ドストエフスキーが実体験を元に書いた獄中記。監獄を”死の家”と呼ぶ……しかしあまりそうは感じなかった?いや、でもハッとさせられるのである。 plot summary 妻殺しの罪で服役していたゴリャンチコフの『死の家の情景集』という手記。 author …

『君の名は。』感じて想う

ネタバレをするつもりはないけれど、書いているうちに内容に触れることもあるかもしれない。頭まっさらで見たい人は読むのを思い止まろう。 Introduction 前作から比べると、その上映規模と広告展開の多岐さに新海誠もここまで来たか、と思わざるを得ない。…

『セヴァストーポリ』戦争

トルストイは軍人だったのは有名な話。その時の経験が作品にも活かされている。では、軍人として何をしていたのか。 その中で最も苛烈だったのがこの露土戦争末期クリミア戦争のセヴァストーポリだろう。この本はトルストイがまだ文壇に名を馳せていない頃、…

『聖ペテロの雪』きゅん

聖ペテロとは? イエス・キリストの最初の弟子とされ、キリストの弟子たちの中のリーダー的存在と目されていた。キリスト教は様々な諸派があり、それぞれに違いがある。その違いで戦争が起きたりしているのだが、この聖ペテロという人物はその諸派のいずれで…

『素晴らしいアメリカ野球』は宇宙一

原題がThe Great American Novel。直訳すると「偉大なアメリカの小説」だろう。そこを『素晴らしいアメリカ野球』と訳した人はすごい。 なにもかもが異常だから異常が異常だと思えないという小説。「偉大なアメリカ小説」という原題からはかけ離れてた無軌道…

『伯爵夫人』erectio

声に出して読みたい日本語。次々と繰り出される淫語は小気味よく笑いを誘う。伯爵夫人とは何者なのか。活動写真(映画)を揶揄しつつ小説の構造自体もその揶揄されている通りなのではないだろうか。 あらすじ おっぱいいっぱいおまんこいっぱい こんな笑劇だ…

『足摺岬』

寂しいのは自分をわかってもらえないし自分でもわからないから。理由は言葉にならずただ己の心の中で形を持たず、ふわふわとしている。 言葉にならない気持ちが涙になり慟哭になり、岬へと足を運ばせる。「死ぬ」ということは解放を意味するのだろうか?いや…

『美濃牛』(みのぎゅう)

どこかに置いていないかと探し続けて数年。もちろん古本屋にも行く。しかしどうしてもない。先日ついに取り寄せしようと思い問い合わせる、絶版とのこと。再版してると思ったが……意外です。 もう面倒になったのでネットの力を借りて手に入れた。 著者(殊能…

『黒猫白猫』オスメス

マイベストコメディ映画の座を射止めたのはエミール・クストリッツァ監督の『黒猫白猫』。すごくいい映画。見ないのは持ったいない。むしろ見なさい。色々とあほらしくなってくるから。先週の文芸座で観てきた。 一応あらすじ ジプシーのマトゥコは、自称ダ…

どこから『私の消滅』するか

中村文則はいつか読もうと思っていた作家。『私の消滅』が本屋の店頭に並んでいるのを見て「早いな」。文学界の六月号に掲載されたばかりだろう。予め決まってたんだろうな。パラパラと単行本をめくった。違いは巻末に参考文献についての一言と内容について…

re:『UNDERGROUND』

以前にもこの映画のことには触れたがその時は見終わった後の気持ちに任せるがまま書いたので感想と言えるほどのものではかった。今週末に文芸座でエミール・クストリッツァ監督作品の上映がある。これは時機を得た。改めて振り返り今週末に臨もうぞ。 ・スト…

『ロリータ』コンプレックス

スタンリー・キューブリック監督の『ロリータ』は原作者ナボコフが脚本を書いたもののその2割程度しか使っておらずナボコフも不満を漏らしていたという(書いた脚本がそのままだったら7時間にも及ぶってなったら仕方ない気もする)。十分いい映画だと思っ…

『重力の虹』HAHAHA!理解不能

わっけわかんねぇ。 ささやかではあるがそれなりに本を読んできた身としては、たいていの本は読めると思っていたけれど今回そのチンケな自負をぶっ壊していただきました。ありがとうございます。世の中は広いね。あらすじをかけるほどに読めず内容も理解でき…

『オービタル・クラウド』個人的な話

まず陳謝。「三冠達成と言いはするが其の実我が心胆を律動させること叶わぬだろう」続けて曰く「荒筋を読んでも引き込まれぬ。良いものは荒筋の時点で魅力的なもの」さらに曰く「宇宙が舞台、しかし月よりも遠くに行かぬさいえんすふぃくしょんに目新しいも…

『こころ』時代性

都合三度目か、この本を読むのは。中学生で1回高校生で1回そして今大学生で1回。その時その時で感想は違うけれど、今回で始めて「やるな……」と思った。(何様だ)うーん、自分の未熟さを思い知るばかり。特に高校生の頃はこの本(てわけでもないが)バカ…

『私の殺した男』また、殺した男に私は

あらすじ 第一次世界大戦が終わるも戦争中に殺した男のことが忘れられないフランス人のポール。彼の死体の傍らには恋人に宛てた手紙があった。懊悩するポール。人を殺した罪を戦争のせいにすることができず、自らの罪だと常に悔いる。 そしてポールは自分の…

『1984年』は何時?

『未来世紀ブラジル』を思い出した。それもそのはずでこの映画は1984年版『1984年』だとギリアム監督は言っていたそうだ。この出典はWikipediaだが信用していいだろう。それほどまでに根底にあるテーマ、扱い方はちよっと違うけど…は似通っていて全体は個に…

『スチームオペラ』 それはニッチ

スッチィィィィィムパァァアァァァァァンンンンンクゥゥゥゥゥゥ! あらすじ 蒸気機関を主な動力源とする大都会に暮らす少女エマは、空中船《極光号》の船長を迎えるため港への道を急いでいた。船内の一室で、ガラス張りの”繭“に封じられた少年を発見し、解…

『夏の夜の夢』間抜けたちの狂想曲 

愛すべき間抜け。間抜けかわいい。 あらすじ(夏の夜の夢) 妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ薬を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇。 アテネの王様シーシ…

『蒲団』もふもふ

蒲団という題名だけしか知らず、いつ頃の作家なのかも知らず。今回紐解けば日本の私小説の先駆けとも言える小説だったそうな。私小説というよりか自然主義の代表作として解説には書かれていた。 私小説は自然主義の大枠の中に入るのだろう。そもそも自然主義…

服は人なり!(カエアンの聖衣)

”服”からよくここまでの大法螺が吹けるのだろう。発想が普通じゃないよ。バリントン・J・ベイリーはすげえなと改めて思う。 あらすじ 服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対するザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。…